VR関連の動画やゲームの普及は進み、今や簡単に家庭で楽しめるコンテンツとなっています。
しかしその分「VR酔い」に悩まされるパターンも増えてきているようで、せっかく買ったのにそのまま封印してしまったという人もいるのではないでしょうか。
VR酔いが発生する原因はさまざまですが、いくつかの知識を持っていれば、対策によってある程度は症状を防ぐことができるかもしれません。
快適にVRを堪能するためにも、この機にVR酔いについて詳しくチェックしてみたいと思います。
「どうせ酔うから……」と諦めていた人が、また再びVRに触れるきっかけになってくれたら嬉しいですね。
そもそもVR酔いはなぜ起きるの?
感覚のズレが原因という説
吐き気や倦怠感といった症状を引き起こすVR酔いですが、その理由は研究段階のためいまだはっきりとしたものは提示できないようです。
しかし有力な説として「感覚不一致説」というものがあり、VR酔いに悩んでいる人は「頭と身体の感覚のズレ」が問題となっているのかもしれません。
見えている映像と実際に身体で感じている感覚が矛盾していると、そのズレが「酔い」という不快感によって表されることになるのです。
視覚情報では「動いている」、でも平衡感覚では「動いていない」、そういったVRならではの状況が酔いを誘発していると考えられるでしょう。
もちろんこれ以外のこと(環境やシステム)が原因となっている可能性もありますが、今のところはこの感覚不一致説が主要問題になると思われます。
乗り物酔いに悩まされる人は要注意?
車や電車に乗っているときに感じる不快感である「乗り物酔い」も、VR酔いと似たメカニズムを持っています。
そのため普段から乗り物酔いに悩まされるという人は、VRの使用時により注意をする必要があるかもしれません。
VRコンテンツを購入する際には、乗り物酔いをするかどうかを1つの判断基準としてみるといいでしょう。
特にVR酔いが起きやすい場面とは
VRゲームや動画のなかには、VR酔いを引き起こしやすいシーンや瞬間があります。
あらかじめそのポイントを理解しておくことも、VR酔いを知るための一歩となるでしょう。
VR酔いを起こしやすい場面については、よく以下のようなものが挙げられます。
・目の前で映像が激しく動く
・フレームレートの低下や処理落ちによる映像のブレ
・光が多用される瞬間
・動きの加速を思わせるシーン
例えば上記のようなものを採用しているゲームや映像はプレイ中の身体に影響を与え、VR酔いを引き起こす可能性があるのです。
これからVRコンテンツを楽しむ予定の人は、こういった場面から生じる感覚のズレに注意しておきましょう。
VR酔いを防ぐためのポイント
体調管理を徹底しよう
体調が優れない状態でのVR体験は、ときとして肉体に過度な負担を強いることになります。
具合が悪いと普段よりもVRからの刺激を強く感じてしまい、結果としてVR酔いを引き起こす可能性があるでしょう。
VR酔いを防ぐためにもまずは体調管理を徹底し、万全な状態で遊べるようにしておくことがおすすめです。
不調時はVR酔いだけでなく、その他さまざまな変調を身体にきたすこともあります。
場合によっては体調がさらに悪化することも考えられるので、VR酔いを感じたときはまず自身の体調を整えることを意識していきましょう。
デバイスは正しく使おう
VRゴーグルやヘッドセットを正しく使用することも、VR酔いへの防止策として有効です。
例えば装着がズレているとVRをしっかりと認識できず、映像のブレや乱れにつながります。
それは当然ながら酔いという不快感を伴ってくるので、プレイするほどに身体への負担となってくるかもしれません。
特に初めてVRデバイスを利用する人は、その使い方を欠かさずチェックして、正しく使っていくことがおすすめされます。
装着時の違和感を無くすだけでも使い心地は変わってくるので、VR酔いに困ったときはデバイスの使い方を見直してみてください。
長時間の視聴はNG
VRに限りませんが、長時間の映像視聴はどうしても身体に重荷となってしまいます。
なかでも感覚に刺激を与えることになるVRは、疲労によってもVR酔いのような症状を引き起こすことがあるでしょう。
そのためVRを楽しむときは長時間の利用を避け、必ずこまめに休憩をするようにしてください。
実際にVR酔いの症状が出る前に休むことがコツで、1時間や30分ごとに区切りを設けるのがおすすめとされます。
健康な状態を保つことを意識して、なるべく複数回に別けてのプレイを予定しておきましょう。
ゲームなどはついつい「きりのいいところまで」と考えてしまいがちですが、健康を度外視してまで続けることはマイナスとなってしまいます。
我慢は大敵となるので、VR酔いが起こる前に休むという点はしっかりと実践していきましょう。
慣れるために最初は軽めのVRを
VRの映像や雰囲気に慣れていくと、少しずつVR酔いが軽減されていく可能性もあるようです。
そのため最初のうちはなるべく軽めで、見やすいVR作品の視聴をおすすめします。
激しい動きや光の明滅が少ないVRなら、酔うほどの刺激を体感することは減っていくでしょう。
そういった柔らかな作品を通してVRに慣れていけば、VR酔いへの対策になるだけでなく、さまざまなVR作品を知るきっかけにもなります。
いきなり勢いのあるゲームや映像に触れるのではなく、段階的にVRのレベルを上げていくことも、VRを楽しむ1つの方法になることでしょう。
むやみに視点を動かさないのがコツ
特に最初の頃ほど、VR映像を堪能しようとして視点を上下左右に動かしてしまうことがあるかと思います。
しかしむやみに視点を動かすことはVR酔いの原因となるため、慣れないうちはおすすめできないプレイングとなるでしょう。
現実の視点のように勢いをつけて見回すことはせずに、ゆっくりと慎重に画面を動かしていくことが、VR酔いを防ぐコツとなります。
全体を見ようとするのではなく、1点に集中して少しずつ視野を広げていくような感覚をイメージして、仮想世界を堪能してみるといいでしょう。
VRの世界は現実を模写するような場所ではありますが、それでいて非現実を全面に押し出してくる空間であるともいえます。
そのため普段の生活と変わらない感覚でVRを体験しようとすると、VR酔いのようなズレを生じさせてしまう可能性があるのです。
上手くVRに馴染めないときは、仮想世界との接し方を改めて考えてみるといいでしょう。
環境を見直してみよう
VR動画やゲームを楽しむときの環境も、VR酔いに関わってくる重要なポイントです。
あまりにVR酔いが激しいときは、自宅の環境そのものを見直す必要が出てくるでしょう。
例えば不自然な体制でゲームをプレイしたり、他の作業と並行しながら映像を見たりといった行為は、VR酔いに発展してしまうかもしれません。
この機にVR専用の環境を整えて、それだけに意識を集中できるようにしてみることがおすすめです。
身体にVRならではの感覚が染みついていないうちは、周囲の環境が自身の感覚に大きな影響を及ぼすと予想できます。
どうしても短時間で酔ってしまうときは、まずVRで遊ぶときの環境をチェックしてみてください。
その際には家族や友人に頼んで、不自然な部分を指摘してもらうのもありですね。
VR酔いになったときの対処法
とにかく休むことが大事
VR酔いを感じたときは、とにかくプレイを中断して休むことが大切です。
横になって目や耳の感覚を休めたり、簡単なストレッチを行ったりすることで、酔いの症状が緩和されることもあります。
間違ってもそのままプレイを続けることのないように、意識して休みを取り入れることを忘れないようにしましょう。
特に吐き気や頭痛といった明確なサインが少しでも感じられたときには、すぐに休憩を挟むようにしてください。
放置しておけばVR酔い以上の症状を引き起こす可能性もあるので、非常に辛い思いをすることになるかもしれません。
できればその日はVRでのプレイを止めて、別の作業や仮眠を行うことがおすすめされます。
外界と接触する
VR酔いによって神経が逆立っているときは、それを鎮めるための行動を取るべきだといえます。
例えば窓を開けて外の空気を吸ったり、顔を洗ってクールダウンしたりといったことが、対策として考えられるでしょう。
VRによってズレた感覚を正常に戻すためにも、そういった外界との接触はこまめに図っていくといいですね。
他にも外の景色をぼんやりと眺めたり、深呼吸を繰り返したりすることも、VR酔いの症状を和らげることにつながります。
「酔ってきた!」と感じたときには、休憩しつつ上記のような行動を取って早めに回復できるように動いていきましょう。
治ったと感じたときこそ要注意
軽いVR酔いであれば、少し休憩するだけでも十分に回復することはできるでしょう。
しかしだからといってまたすぐにゲームをプレイしたり映像を視聴したりすれば、再びVR酔いに見舞われる可能性は高いです。
治ったと感じてもしばらくは安静を守り、身体を休めることに集中するようにしましょう。
できるならその日はVRを諦め、翌日以降のために体調を整えることがおすすめされます。
VR酔いが長引けばそれだけ快適に楽しむ時間がなくなっていくので、思い切って休養に踏み切るのも賢い選択です。
外でVR酔いが起きたときは
最近はVR体験が行える専門施設が各地に続々とオープンしていて、家庭のものよりもずっと迫力のある映像を楽しむことができています。
しかしそこにはやはりVR酔いの可能性が潜んでいて、ときには何かしらの症状が起こることもあるのです。
もし外出先の施設等でVR酔いに悩まされたときは、以下の対策を実践していきましょう。
座れる場所を確保する
VR酔いらしき症状を感じたときは、とにかく座れる場所を探して、体を安静にすることが先決です。
間違ってもそのまま別のアトラクションを楽しんだり帰宅したりするのではなく、しっかりと身体を休める時間を確保しましょう。
友人や家族と来ているとついそのときのテンションに引っ張られて、VR酔いの症状を軽視してしまいがちです。
当然それはさらに辛い症状につながる可能性があるので、外出先であるのならなおさら早めの対処を徹底していきましょう。
スタッフの人に容体を伝える
もし外で明らかなVR酔いが起きたときは、速やかに近くのスタッフに声をかけましょう。
休憩室への案内など何らかの対策を取ってくれるはずなので、その指示に従って行動すればひとまず安心できます。
1人で我慢をするのが最も良くないことなので、軽い症状であってもとりあえず周りの人に容体を伝えておくことは重要です。
VR酔い対策に関してはこれからが本番?
VR酔いをしないための技術開発が進んでいる
VR酔いはゲームや映像を作る側にとっても1つの課題となっているようで、今でもさまざまな対応策が考えられています。
そのため今後さらに研究が進んでいけば、具体的な対策やVR酔いしづらい環境が提供されるかもしれません。
PSVRを開発しているソニーやアメリカの大手VRメーカーOculusなどは、積極的にVR酔いを防ぐためのシステムを開発していることがうかがえます。
新型デバイスの発売やアップデートによって、今よりもずっと快適に遊べるVRコンテンツが展開されていく可能性は十分にあるでしょう。
現段階でVR酔いに悩まされている人も、将来的には問題が解消されることが期待できます。
これからもVRの新情報をチェックしていくことが、1つのVR酔い対策になると考えられるかもしれませんね。
酔わせないコンテンツの開発にも期待
VRを楽しむ側にとっては、そもそもVR酔いなんて起こらないようなコンテンツが理想となります。
しかしそれは決して実現不可能なものではなく、企業努力によって今少しずつ達成されつつあるものであるといえるのです。
例えばプレイヤーの姿勢(座っている状態)に近い目線によるゲームや、VR酔いの原因となる光や演出を抑えた映像の開発などが、今後は期待できると思われます。
VR酔いに関するデータが充実し始めた今だからこそ、利用者を酔わせないコンテンツは本格的に作られていくと予想できるでしょう。
もしどうしてもVR酔いがシンドイと感じるときには、最近開発されたもの、もしくはこれから発表されていくコンテンツに注目していくのがおすすめです。
自分に合ったスタイルに設定できるものが増えるかも
VRは個人によって感じ方や見え方が変わってくるコンテンツであるため、人によっては何でもない映像であっても、ある人にとってはVR酔いを引き起こすといったパターンが多くみられます。
そういった個人の感覚を尊重できるような設定システムが、今後VRコンテンツに導入される可能性はあるでしょう。
例えば今でも設定からカメラの動きを抑えたり、プレイしやすいインターフェースに変更したりといったことができるVRゲームも増えてきているのです。
こういった自由な設定がさらに進化していけば、その人個人に合わせた最適なVR環境を作ることだってできるかもしれません。
「もう少し画面が揺れないようにしたい」「自分の目線に近い位置でプレイしたい」といった細かい要望が通るのなら、酔わないための環境を自分で探していくこともできます。
自分に合ったVRスタイルを設定できるようになる未来が来れば、VR酔いなんて言葉はなくなってしまうかもしれませんね。
まとめ
VR酔いはある意味でVRコンテンツの天敵であり、その楽しみを削ぐ根本的な原因となっています。
しかしVR酔いはしっかりとした対策を行うことで、ある程度は抑えることができるものでもあるのです。
VR酔いに悩まされているという人は、そのまま遊ぶことを止めてしまう前に、こちらで紹介したような方法を試してみるといいでしょう。
自分にとって適切な対策が見つかれば、これまで以上に快適な状態でVRを楽しめるかもしれませんよ。