湊かなえのおすすめ小説10選!癖になるような「痛み」はとにかく必見!

読後に何とも言えない嫌な感触を残す「イヤミス」、そんな特殊で魅力的なジャンルの小説を読むのなら、「湊かなえ」の名前は必ず挙がることになるでしょう。

複雑な心境を読者に与えながら、それでも何度も読みたくなってしまう湊かなえの本は、今後も注目間違いなしのものとなります。

今回はそんな湊かなえ先生の作品から、おすすめの小説を10冊選んでいきましょう。

読み終わったときの感覚と、読書中の高揚感、そういったあらゆる魅力を持つ湊かなえ作品を今一度、本記事で確認してみてください。

湊かなえってどんな小説家?

湊かなえのおすすめ小説10選

デビュー作の小説「告白」が週間ミステリーベスト1位、「ユートピア」で山本周五郎賞を受賞、その他さまざまな賞で候補の常連となっている実績が印象的な湊かなえ先生は、これまでに複数の名作を生み出している定番の作家です。

嫌な気分になるミステリー「イヤミス」を一般的な言葉にした功労者でもあり、そのインパクトのある展開と染み込むような文体が、多くの人の心を捉えている小説家として知られています。

読めばその瞬間から世界に引き込まれ、衝撃のラストまでいっきに連れ去られていく、そんな没入感の高い小説をたくさん見つけることができるでしょう。

女性の感性に寄り添った作品が多く、どきりとするような切れ目を文章の合間に入れてくるのも特徴。

だからといって女性向きの小説というわけではなく、男性にも響く心理要素が目立つので、人を選ばないオールマイティな内容となっています。

イヤミスと聞くと何となく読みづらさや抵抗感を感じられるかもしれませんが、むしろ湊かなえ作品には癖になるような「嫌さ」や「痛み」があるので、まずは1冊おすすめ作品をチェックしてみてください。

湊かなえのおすすめ小説10選!

告白

湊かなえ先生の代表作であり、イヤミスの在り方を変えた名作がこの「告白」です。

学校のなかで自分の子供を殺された教師が犯人である生徒2人の存在を告白し、復讐を宣言するところから物語は始まります。

殺人というわかりやすい犯罪行為はもちろん、そこから派生していくさまざまな悪意は、一種の芸術のように感じられるでしょう。

視点がいくえにも変わる構成のおかげで、悪意の輪郭がよりはっきりと見えてくるのもこの小説のポイント。

キャラクターの現状や心理を使って悪意を応用する様子からは、作家としての力量を見受けられますね。

嫌な気持ちになるのがイヤミスであるため、この告白もまたその例にもれず嫌な気分にさせられることでしょう。

しかしこれは何なのか、告白を読み終えた結果、私の心はかなりの爽快感を感じていました。

ラストシーンの会話は、本当に声を出してしまうほど圧倒させられましたね。

ただ同時に、このラストが嫌だ、もしくは主人公の森口 悠子が嫌いという意見に深く頷ける気持ちもあるのです。

純粋に嫌な話というだけで終わるのではなく、何故嫌なのか、何故嫌に感じないのかといった感覚の相違を楽しめるのが、この本の魅力だと思います。

読後に色々なことを考えさせる告白は、今後もおすすめしたい作者の代表作となるでしょう。

少女

「少女」はミステリー的な要素よりも、どちらかといえば青春小説の雰囲気が強い本となっています。

とはいえそこにも黒い悪意がわんさかとあふれ出ているので、「ああ、湊かなえの小説だ!」と納得できることでしょう。

死に一種の憧れを抱く2人の少女、彼女たちの感受性によって彩られる死や悪意の雰囲気は、小説を湊かなえ色に染め上げてくれます。

人の死を見たいがために行動を起こすその様子や、それが因果応報という形で進行していく展開は本当に面白いです。

明滅するライトの下で読んでいるような、明暗がぐるぐると目の前を駆けていくような感覚は、たぶん読まないとわからないでしょう。

暗いばかりではなく、どこか明るい雰囲気もある。

でも光が強いから影が濃くなることを、この物語は上手に利用しているように思えるのです。

キャラクターたちの関係性が絡まってほどけてつながっていくのも魅力で、最終的には見事な線として表現されるのはさすがといったところ。

最後の最後で読者は壮大なミステリーのなかに放り込まれていたことを知り、その結果「少女」という小説が忘れられないものとなるでしょう。

望郷

瀬戸内海の島で生まれた人々にスポットを当てた連作短編集「望郷」も、湊かなえ先生の魅力を知るのにうってつけの小説です。

土地の雰囲気や空気感からやや陰鬱な様子が描かれ、そこで生きる人間模様もまた暗く、閉ざされている世界にとらわれているのが本作の特徴。

それでもどこか光が射すような感覚があるため、湊かなえ作品のなかでも比較的前向きになろうという意志を感じられる本になっているでしょう。

イヤミスだけではない、湊かなえ先生の小説的テクニックを楽しめるので、ぜひチェックしておきたいですね。

湊かなえ作品をおすすめすると、「なんだか疲れた……」という感想をもらうことが多いです。

しかし望郷は短編であることから比較的読みやすく、イヤミスらしい要素も薄いのでスムーズに楽しめる本になっています。

少しラフなものを読みたいときには、こちらの短編集のなかからピックアップしてみるのがおすすめです。

贖罪

負の連鎖が最初から最後まで物語を縛る、そんな息をするのも疲れるような作品「贖罪」もおすすめの小説です。

15年前の殺された少女エミリ、エミリと一緒に遊んでいた4人の少女たちは犯人を見ているが、決定的なことは思い出せない。

エミリの母親はそんな4人の少女たちを責め、犯人を見つけなければ許さない、私に対しての贖罪をしなさいと迫る。

突然罪を背負わされた少女たちが成長し、それぞれの破滅に向かっていくのが本作のあらすじです。

げんなりするような設定に少女たちの事情が重なって、ときにはページをめくるのをためらうほどにしんどくなるかもしれません。

意図せず狂わされた彼女たちの世界は、修正できないほどの傷を負ってしまったために、あり得ないような行動に出ざるを得なかったのでしょう。

事件そのものではなく、そこから派生する人間の言葉や感情までもが人の人生を変えてしまうこともある。

贖罪を読むと、そんなことをじっくりと考えさせられてしまうでしょう。

重たくて暗い話ですが、手紙形式や複数の視点からの描写が物語を推し進めてくれるため、意外にも読みやすさはあると思います。

キャラクターの感情がダイレクトに伝わってくるような湊かなえ流の文体は、こういった内容の小説を書くのに不可欠なのかもしれませんね。

Nのために

湊かなえ作品のなかでも「純粋ミステリー」に近い雰囲気が独特の「嫌さ」を醸し出す「Nのために」も、私はおすすめしておきたいです。

タイトル通り「N」という人物を中心とした物語ですが、まさかの主要人物全員に「N」がつく設定には驚き。

それぞれのNがそれぞれのNのために行動する展開は、想像していた以上に複雑で人間味に溢れたミステリーを提供してくれます。

殺人事件というひとつの事件をそれぞれのキャラクターから見ていく構成は、強い感情移入を誘うでしょう。

なぜこんなことが起こったのか、どうしてこうなってしまったのか。

やるせない気持ちが胸を打つのに、読むことは止められない。

緻密なプロットは納得と同時にモヤモヤを読後に与えてくれるので、湊かなえの作風が気に入っているのなら必読の書となりますね。

夜行観覧車

嫌ですねぇ……本当に嫌な感じ。登場人物も物語の始まりもそこから広がっていく展開も、何もかもが「辛さ」と「痛み」にまみれています。

そんな最高級のイヤミス「夜行観覧車」はおすすめしていいのか、悩むところですがやっぱりおすすめしたいと思います。

何故ならこの本には、イヤミスというジャンルがどこまでいけるのか、そしてどこまで許されるのかを試しているような、実験性を感じられるからです。

それぞれの家族がいがみ合い、家族内の問題に苦悩し、解決策が見つからないままさらに事件が起きていく。

そんなどうしようもない状況のなか、人は何を考えて何をすべきなのか。

身勝手な人間性がこれでもかと表現される夜行観覧車からは、一種の生きる術のようなものを見出せるかもしれません。

全キャラクターを嫌いになれるくらいの濃い内容ですが、そこからなにを読み取れるかで、この本の楽しみ方は変わってきます。

家族について、もっといえば暮らしていく共同体について、深く考えるきっかけを夜行観覧車は与えてくれるでしょう。

往復書簡

手紙のやりとりから物語を明らかにしていくスタイルが魅力の「往復書簡」は、湊かなえ先生の新しい一面を垣間見れることからもおすすめの小説です。

この本はいわゆる「書簡体形式」の小説となっていて、手紙の内容だけで話が進行していきます。

いつもの小説とは違った文体や言葉が使われているので、新鮮な気持ちで湊かなえ節を楽しめるでしょう。

3つの短い物語を使って過去の事件が少しずつ見えてくる様子は、隠された扉を開けるようなドキドキ感があります。

憂鬱で嫌な展開は鳴りを潜めているので、比較的気楽に読める本だといえるでしょう。

往復書簡のようなスタイルが特徴の本は実はたくさんあり、以下のようなタイトルが有名&おすすめです。

・若きウェルテルの悩み/ゲーテ
・貧しき人々/ドストエフスキー
・トカトントン/太宰治
・恋文の技術/森見登美彦
・少女地獄/夢野久作

書簡体小説にはそこでしか出せない魅力があるので、興味があるのならぜひチェックしてみましょう。

リバース

湊かなえが初めて男性の主観視点で書いた小説「リバース」を読んだとき、あの「告白」の衝撃を思い出しました。

普通の日常を過ごすちょっと冴えない主人公「深瀬和久」、コーヒーには蜂蜜を入れる珍しいタイプ、あるとき通っていたコーヒー店で出会った女性と恋人関係になる。

しかしそんな女性の下に「深瀬和久は人殺しだ」という告発文が届く、過去にとある事件の真相を友人たちと隠しつづけてきた深瀬は、その事実に向き合うことになっていくというのがストーリーの土台です。

告発文を出し続ける犯人を捜すうちに、深瀬は後悔や責任のなすり付け、そして親友という関係性への疑問といったあらゆる問題と直面します。

そして事実が明らかになるにつれて納得のラストに……からの最後。

このドカンと体を打ち付けるような驚きは、先述した通りデビュー作「告白」のあの感覚を思い出します。

ぜひ衝撃を再び体感できるように、最後の最後までしっかりと読んでみてください。

母性

家族関係の闇を書くのが湊かなえの魅力だと言われることがありますが、それはこの「母性」という小説があるからでしょう。

母親が自信を持って提供する母性、しかし読者から見ればそれは一種の悪意であり、認識できていない分それよりもさらに悪いものにさえ見えるときがある。

そんな身近な悪意を描くこの小説は、男性が読んでもヒヤリとするような本となっています。

母親の視点だけでなく、娘から見た世界が書かれているのもこの本のポイント。

そこに見える食い違いと感情のすれ違いが、読んでいてまた辛い気持ちにさせてくれます。

「母親」というイメージが強すぎるゆえに、歪んだ母性が蔓延るゆえに、自由をからめとられてしまった家族の様子からは、恐怖をも感じるかもしれません。

でも面白いんです、この本。

女性でも男性でも関係なく読み進められるので、湊かなえに興味があるのなら要チェックとなるでしょう。

ユートピア

悪意がなくたって悪意は成立する、そんなどこにでもある日常を書いてしまった「ユートピア」も、湊かなえ先生を読むのなら必見となります。

これもまたイヤミスらしい内容で、善意という盾はときに相手を押しつぶす凶器となることを教えてくれるようです。

いかに状況が悪意の種を蒔く手伝いをしてしまうのかがわかるので、ユートピアを読むと自分の身の回りをもう一度確かめたくなるような衝動に駆られるかもしれません。

ドロドロとした人間の裏側と感情の肌触りが痛ましく、とてもリアルな感覚を与えてくれます。

閉塞感のある世界は逃げ出したくなるような息苦しさを読者に与えるのに、そこで生きているキャラクターたちは平然としているのが怖いところ。

悪意の描写が丁寧かつ細やかというのも魅力で、この文章力があるからこそ湊かなえ先生は読ませるイヤミスが書けるのでしょう。

この小説はかなり純度の高いイヤミスになっているため、湊かなえ作品に慣れてきた頃にぜひ読んでみていただきたいです。

湊かなえを読むときのポイント

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イヤミスに惑わされないで

さんざんイヤミス的要素を推しておいてなんですが、実際に小説を見てみると、湊かなえ作品の魅力はそればかりではないことがわかります。

そのためイヤミスというジャンルに惑わされずに、純粋に面白い作品を探っていくのがポイントです。

もちろん嫌な気持ちになる本は多いですが、「嫌な気持ちになって終わり」では、ここまで湊かなえの名前は有名になっていません。

嫌になる気持ちのその奥に、新しい何かが見つけられる。

それが湊かなえ作品の真骨頂であるため、ぜひ小説の表面だけでなくその裏側にまで手を伸ばしてみてください。

映像化作品も見ごたえあり

湊かなえ作品は映像化の定番になっているので、たくさんの映画やドラマが作られています。

そのためまずは映像作品から小説へ、もしくは小説を読んだ後に映像を見てみるといった、二重の楽しみ方ができるでしょう。

人間の演技と小説の文章では、受け取る感覚が大きく変わってきます。

両方を体験してみることで、より深く湊かなえが理解できるかもしれませんね。

まとめ

湊かなえ作品の魅力はたしかなものであり、読めばきっとそこにしかない面白さを感じることができるでしょう。

ときには読むのが辛くなるような内容もありますが、そこにある痛みや心苦しさは読んだ後、何かしらの形で自分の糧になってくれるような気がします。

マイナスを読んでいるはずだったのに、結果的に自分のなかでプラスになっている。

そんな不思議な計算式が湊かなえ先生の特徴であり、これからもおすすめしたいと思える理由となるでしょう。

まずは一冊、どれくらいの衝撃が本のなかに隠されているのかを、上記のラインナップを参考に体感してみてください。

この記事を書いた人

syunkin999