【脱サラ農業】で知っておくべき給付金・費用・収入・心構えについて

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サラリーマン生活に嫌気が差して、脱サラで農業を始めたいと考える人が増えてきています。

農作物の種類によっては頻繁な世話をする必要がなく、また公的機関から就農者に対する給付金や補助金制度を支給してもらえる場合もあるので、始めるのは難しくありません。

しかし、サラリーマンを辞めて専業で農業をするなら、農作物を育てるスキルはもちろんのこと、事前に収入のこともしっかりと考えておく必要があります。

また、農業の現実を知り、覚悟を持った上で取り組まなければなりません。

当記事では、脱サラで農業をする人の特徴、農業を行う上でかかる費用、収入、失敗しないための心構えなどについて詳しくご説明します。

 脱サラをして農業を始める人の特徴

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脱サラをして農業を始める人は、主に①サラリーマン人生に疲れた、②直接的に人のためになる仕事がしたい、③リストラや老後が不安、この3つのうちのどれかでしょう。

中でもやはりサラリーマン人生に疲れたという人が多いのではないでしょうか。

サラリーマン人生に疲れた

サラリーマンの多くが毎日長い時間をかけて満員電車に乗って通勤をしていますよね。都内なら通勤ラッシュ時には身動きがとれないほどにギュウギュウ詰めで、職場に行くだけでも一苦労です。

また、残業が当たり前になっていますし、2~3時間の残業なんて普通で、定時に上がれるのは珍しいほど。残業の分、給料は高くなりますが、体は必ず悲鳴を上げます。

職場内の人間関係にも苦労することが多いでしょう。職場だけでなく、都会ならプライベートでも人の多さにうんざりしてしまいます。

そして段々そういった人生が嫌になった結果として、「収入は少なくても良いから田舎で農業をしながらゆったりと暮らしたい!」と考えるようになるのでしょう。

直接的に人のためになる仕事がしたい

やりがいのある仕事にはなかなか就けませんし、やりたくない仕事をやっている人がほとんどでしょう。

やりたくない仕事をしていると次第に、「何のために働いているのか分からない!」、そう思ってくるものです。

生きるためには仕事は必ずやらなければならないものですが、可能なら“やりがいのある”仕事をしたいもの。農業では育てた作物を手に取る消費者の顔が見えますし、多くの人に評価される機会があります。

また、土づくりや品種改良、品質などを突き詰めれば非常に奥が深く、農業はクリエイティブな仕事でもあります。そういった“やりがい”を求めて、農業をしたいと考えるサラリーマンの方も多いのです。

リストラや老後が不安

2008年に起きたリーマンショックの後、リストラ失業者が爆発的に増えました。それから10年経った今、リストラされることは少なくなりましたが、それでもいつリストラされるか分かりません。

年齢を重ねるごとに転職が難しくなりますし、同業種への転職を機に給料が大幅に減るということも珍しくはありません。

また、定年後に退職金がもらえたとしても、安定的に年金がもらえるとは限らないので、老後に不安を抱えている方も多いことでしょう。

40代や50代くらいで脱サラして農業を始める人の中には、このようなリストラや老後の不安が要因になっている人もいらっしゃいます。

新規就農者に対する給付金・補助金制度/融資

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農家は年々、高齢化になっていることから、公的機関や市町村などが新規就農者に対して、さまざまな給付金・補助金の支給を行っています。

給付金・補助金というのは、農地や農機、施設の購入といった農業を始めるための準備金として支給されるもので、全国規模で募集されているだけでも500種類以上あると言われています。

その中でも特に有名なのが「農業次世代人材投資資金」と「青年等就農資金」です。

農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)

農業次世代人材投資資金は、以前に「青年就農給付金」と呼ばれていたもので、45歳未満の新規就農者に対して支給されるものです。

また、農業次世代人材投資資金には、就農前の研修を後押ししてくれる「準備型」の資金と、就農直後に経営を支援してくれる「経営開始型」の資金の2つの種類があります。

準備型

道府県が認める道府県農業大学校や先進農家・先進農業法人などで研修を受ける就農希望者に、最長2年間、 年間150万円を交付

経営開始型

新規就農される方に、農業を始めてから経営が安定するまで最長5年間、年間最大150万円を交付

いずれも支給されるもので、原則として返還の必要はありません。ただし、場合によっては返還になることもあります。

農林水産省|農業次世代人材投資資金について

青年等就農資金

青年等就農資金は、新たに農業経営を開始する人に対して無利子で融資するもので、日本政策金融公庫が扱っています。

融資限度額は原則3,700万円、返金期間は12年で、担保などは実質必要なしです。

資金の使い道については、生産用の施設、農機の購入、農地の借地料など、基本的には農業に行う上で必要なる全ての費用が対象になります。

日本政策金融公庫|青年等就農資金について 

農業を行う上でかかる費用

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農業を始めるにあたって、農業次世代人材投資資金の経営型であれば年間最大150万円(最大5年間)の支給、青年等就農資金の最大3,700万円の借入(返金期間12年)が可能です。

そのほかにも地域独自の給付金制度がありますが、150万円や3,700万円という大きな金額を聞くと、「農業はお金がなくても簡単に始められる!」と思ってしまうはずです。

しかし、農業を行う上でかかる費用は多大です。農地や施設、農機、農具などのほか、当然ながら生活費もかかってきます。

全国新規就農相談センターが全国の新規就農者を対象に行った「2016年度新規就農者の就農実態調査」によると、新規就農者が用意した自己資金は平均569万円(土地取得代除く)。内訳は1年目の生活費に159万円、設備や経営に費やした金額が411万円でした。

もちろん、2年目以降も生活費がかかりますし、肥料や種苗、肥料や燃料、出荷費用など農業を営むための費用もかかってきます。

このことから、準備資金の給付を受けたり借りるにしても、最低でも1年間分の生活費くらいは貯金がある状態で始めるようにしましょう。余裕があれば1000万円くらいは持っておきたいところですが。

農地の購入・賃借料

農業を始めるためには、まず農地を借りるか購入しなければなりません。

日本不動産研究所の「田畑価格及び賃借料調」によると、農地の売買価格の全国平均は10a(1,000㎡)あたり、田んぼが約81.8万円、畑が約46.9万円。賃借料の全国平均は10aあたり、田んぼが約1万円、畑が約5.5千円。

準備資金に余裕があれば購入するのもアリですが、初めは何かとお金がかかるので、まずは借りるのが得策です。

農機・施設など投資費用

初期費用として最もかかるのが農機や施設などの設備投資です。

何を育てるかによって変わってきますが、使用頻度が高い農機としてはトラクターやコンバイン、田植え機などがあります。

こういった農機は新品なら1,000万円を超えるものもありますが、中古で半額以下で売られているものもありますし、リースすることも可能です。

軽トラックは必ず要るもので、新品または中古で買うことになるので、軽トラだけでも最低50万円はみておかなければなりません。

ハウス栽培を行う場合にはビニールハウスなどが必要です。ビニールハウスでは安くても10aあたり200万円ほど、耐久性のあるパイプハウスなら400万円ほどかかってきます。

このような設備投資にかかる費用をいかに抑えるかが、農業を始める際の一つのキーポイントになるでしょう。

肥料・燃料など営農費用

農業は作物を育てるものなので、作物の種苗や肥料も必要になります。また、軽トラやトラクターの燃料、出荷費用などもかかります。

こういった営農に関する費用は毎年必要になるもので、農林水産省の「営農類型別経営統計2016年(個別経営)」によると、露地野菜作経営の1経営体あたりの経営費は全国平均で約364万円(農業粗収益は約608万円)。

営農に関する費用は規模にもよりますが、思っている以上に必要になってくるということを、就農前にしっかりと理解しておきましょう。

家賃や食費など生活費

農業のことばかりに気をとられてしまいがちですが、家賃や食費などの生活費のことも忘れてはなりません。

「2016年度新規就農者の就農実態調査」では、1年目の平均的な生活費が159万円となっていますが、人によっては200万円を超える場合もあるでしょう。ご家族で生活する場合にはもっとも多くなってくるはずです。

しかし、家賃においては市町村などで補助金を出してくれるところが多いので、補助金制度があれば必ず利用しておきましょう。

農業で得られる収入

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農業だけでなく、仕事をする上で最も考えなければいけないので収入です。

農業というと、サラリーマンよりはストレスなく取り組めるものですが、収入に関してはそれほど多くは望めません。

もちろん、規模が大きくなるほど収入は増えますし、規模が大きくなっても農機などの導入で効率化を図ることで、時間給も増えていきます。

しかし、農業を始めたての頃は規模が小さく、準備資金の関係から農機もあまり導入できないので、自ずと収入は少なくなりますし、初めの1年は基本的に無収入となります。

ここでは、分野別の平均収入、品目別の平均収入や時間給などについてご説明します。

分野別(水田・畑作・野菜作)の平均収入

農林水産省の「分野別分類/農家の所得や生産コスト、農業産出額など」によると、1経営体あたりの農業粗利益は、水田が265.8万円、畑作が863.2万円、野菜作が608.2万円(露地野菜作)・1281.4万円(施設野菜作)となっています。

かなり高いように感じると思いますが、これは1経営体あたりなので当然規模がかなり大きい農家も含まれています。

また、農業経営費は引かれていない単純な農業粗利益で、農業経営費は粗利益に対して1/2以上かかってくるのが通常なので、収入(農業所得)としては上記の金額の半分以下となります。

品目別(根菜・葉茎菜・果菜)の平均収入と時間給

続いては根菜類、葉茎菜類、果菜類別の10aあたりの農業所得や時間給などについてです。

農業では主に外で作物を育てる「露地栽培」と室内で育てる「施設(ハウス)栽培」があり、施設栽培では一年を通して栽培できることから、一般的には施設栽培の方が所得も時間給も高くなります。

<露地栽培(10aあたり)>

品目

農業所得

家族農業労働時間

1時間あたりの農業所得

根菜類

だいこん

16万円

116.74時間

1357円

にんじん

14.5万円

102.72時間

1431円

さといも

17.3万円

196.05時間

881円

葉茎菜類

はくさい

11万円

76.43時間

1444円

キャベツ

20.8万円

80.21時間

2580円

ほうれんそう

19.6万円

186.16時間

1052円

レタス

17.5万円

119.28時間

1477円

白ねぎ

33.5万円

312.74時間

1062円

青ねぎ

36.9万円

535.27時間

683円

たまねぎ

20.4万円

127.60時間

1594円

にんにく

32.2万円

192.91時間

1666円

果菜類

きゅうり

73.1万円

883.90時間

830円

なす

82.6万円

936.25時間

882円

大玉トマト

78.2万円

742.46時間

1057円

ミニトマト

86.3万円

1157.69時間

747円

ピーマン

52.7万円

802.57時間

656円

ししとう

92.0万円

1989.27時間

462円

露地栽培において、この中で最も時間給が高いのがキャベツの2580円/時、最も安いのがししとうの462円/時です。

多くの方は初めは露地栽培を行うと思いますが、作物によって利益を出しやすいものと出しにくいものがあるので、時間給を参考に何を育てるのか選んでみるのも良いでしょう。

<施設栽培(10aあたり)>

品目

農業所得

家族農業労働時間

1時間あたりの農業所得

葉茎菜類

青ねぎ

36.0万円

395.61時間

914円

果菜類

きゅうり

117.5万円

1003.72時間

1170円

なす

147.4万円

1623.31時間

908円

大玉トマト

108.6万円

876.11時間

1239円

ミニトマト

205.7万円

1237.04時間

1661円

ピーマン

123.2万円

932.09時間

1320円

ししとう

115.3万円

3175.72時間

363円

施設栽培においては、この中で最も時間給が高いのがミニトマトの1661円、最も安いのがししとうの363円となります。

青ねぎで比較すると、露地栽培では683円/時ですが、施設栽培では914円/時で、施設栽培の方が時間給が高いことが分かります。

初年度における無収入、病気・天災を考慮すること

経営が安定すれば末永く続けていける農業ですが、安定するまでには時間がかかります。

特に農業を始めて1年は無収入になることが多く、初めは規模が小さいことから、2年目以降も十分な収益が得られない可能性もあります。

また、作物は人間と同じように病気にかかることもありますし、天災に巻き込まれてしまうことだって当然あります。

安定していたとしても、天災などでその年は無収入になることもあるので、年間収入が300万円を目標とするなら、400万円や500万円の規模で取り組んでいくことが大切です。

脱サラで農業を営む上での心構えとポイント

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農業は簡単だというイメージを持ちがちですが、実際のところそんなに簡単なものではありません。

たしかに時間的な自由がありますし、ストレスフリーな面はとても大きな魅力と言えますが、肉体的にかなり疲れます。このことから、まず大前提として農業が好きという気持ちがなければ失敗に終わります。

また、作物を育てるための知識やスキルも必要です。何も分からないという場合には、始める前に研修を受けておくのが得策です。

ほかにも、ケガや病気が出来ない、常に借金を抱えた状態で生活しなければならないなど、始める前に農業を続けていくための心構えやポイントを理解しておく必要があります。

農業が好きという気持ちがあることが前提

サラリーマンなら時間的な拘束が非常に長く、満員電車での通勤や残業、人間関係など、大きなストレスがかかるのが普通です。

その一方で、農業は時間的な自由がありますし、近所や農協などとの付き合いはあるものの、作業自体は一人でするものなので、人間関係を気にすることなく取り組めます。

しかし、農業は毎日のように中腰になったり重い物を持ったりと、かなりハードな肉体労働になり、雨の日や台風の日であっても作物を守るために働く必要が出てきたりもします。

こういった肉体労働の部分はやってみないことには分からないものですが、やってみるとほとんどの方が予想よりも大変だと実感するはずです。

辛い状態では続けていけないので、農業が好き、言い換えると肉体労働が苦ではない、という気持ちを持っていなければ、脱サラして農業をするのは難しいかもしれません。

始める前に研修を受けておくのが得策

脱サラして農業を始めようとお考えの方の多くが、農業についてあまり詳しくないはずです。

作物の中には簡単に育てられるものもありますが、大抵は知識やスキルなしでは上手く育てることができません。

さまざまな機関や団体が新規就農者向けの研修を実施しているので、農業について知らない方は、始める前に研修を受けておくようにしましょう。

ケガや病気にかからないよう注意しよう

農業は時間的に余裕がありますが、そうはいっても毎日のように作物のお世話をしなければなりません。また、作物のお世話だけでなく、ほかにもさまざまな作業があります。

サラリーマンであれば、どうしても体調がすぐれない時には欠勤できますし、有給を使うなどすれば、その間の給料は入ってきますが、農業においてはそうはなりません。

農業だけでなく自営業全般に言えることですが、休めば休んだだけ収入が少なくなります。農業においては作物のお世話などの作業があるので、場合によっては休んでいる間に作物が病気になったり、野生動物に荒らされることだってあります。

そうすると、最悪のケースではその年の収入がゼロになることだってあり得るのです。

ケガや病気にかかってしまい、長期的に作業が出来なければ命とりになりかねないので、ケガや病気には細心の注意を払うようにしましょう。

長年、借金を抱えることを覚悟しておこう

公的機関や市町村などが新規就農者に対して、給付金や補助金を支給しています。しかし、給付金や補助金だけでは足りません。そのため、多くの方が融資を受けて借金をしています。

借金を持っている状態が続くと、借金のことが常に頭にあって精神的に疲れてしまうことだってありますし、基本的には返済期限が設けられているので焦りも出てきます。

農業は軌道に乗るまでに時間がかかるので、何年もの間、借金を抱えなければなりません。

軽い気持ちで始めると破産することだってあります。長年借金を抱えても良いという覚悟の上、始めるようにしましょう。

脱サラ農業で知っておくべき知識まとめ

近年では脱サラして農業を始める人が増えていますが、そのうちの約7割が失敗に終わっていると言われています。

農業は非常に魅力的な職業ですが、現実はなかなかに厳しいものです。また、脱サラして農業を始めて失敗すると、後戻りが難しくなる可能性もあります。

農業を甘く考えず、農業をしたいという強い気持ちを持つとともに、農業の現実をしっかりと理解し、覚悟を決めた上で始めるようにしましょう。

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