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ドストエフスキー小説の魅力について!おすすめの作品と読み方のコツを解説!

世界的な文豪であると同時に、日本文学にも深い根を張っている作家「ドストエフスキー」は、心酔するに足る偉大な小説家だと私は思います。

19世紀という今となっては遥か昔、その時代に書いたものが今なお読者を揺さぶり、新規層を獲得し続ける事態はある種異様に思われるかもしれません。

しかしドストエフスキーの作品に触れてみると、それだけのパワーはたしかにあり、むしろこれからさらに時代を重ねることで全貌が明らかになっていく小説だと感じさせてくれるでしょう。

そこで今回はドストエフスキーのおすすめ本を5冊挙げ、それらを軸に読み方のコツや面白さを解説してみたいと思います。

海外文学に興味がある人、ドストエフスキーに挑戦して挫折した人、どんな人にも今後の読書のきっかけとなるように書いていきますので、ひとつ参考にしていただけると嬉しいです。

ドストエフスキーのおすすめ本5選

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罪と罰

罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

死についての思考を、ここまで臨場感を持って書きあげた本はないのではないかと思わせる名作「罪と罰」は、最初におすすめしたいドストエフスキーの1冊となっています。

主人公であるラスコーリニコフが犯した「殺人事件」をポイントに、その周囲で渦巻く感情と考え方の変容を描写する文章は、とにかく読者の気持ちをぐいぐい引っ張っていくことでしょう。

特に物語の前半部分、ラスコーリニコフが実際に事件を引き起こす現場へ向かっていき、その頭のなかで描いている光景を現実のものにしようとする工程は、読んでいる側の呼吸のリズムを狂わすような圧迫感に満ちています。

殺人という行為は当然シリアスなものですが、ここまで苦しく冷たく、そして驚きを添えて書いた小説は少ないのではないのでしょうか。

ここで行われる殺人には、彼が予想できなかった人物の登場もあって、大きく運命をこじらせることになります。

そういった読者の想像を裏切る仕掛けも多々あるので、純粋に小説のエンタメ性も楽しめる作品だといえるでしょう。

罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: フョードル・ミハイロヴィチドストエフスキー,亀山郁夫
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/10/09
  • メディア: 文庫
  • 購入: 11人 クリック: 64回
  • この商品を含むブログ (109件) を見る

<ラスコーリニコフの行動に意味はあったのか?>

そして事件後、罪の意識、達成感、罪なき人の死、善行、周囲への愛、相反するあらゆる要素がごちゃごちゃに詰め込まれていく展開は、ラスコーリニコフの頭と読者の頭を同時に混乱の坩堝に落としていきます。

殺人後の苦しみのなかで、救いを求めつつ破滅を理想とするように動くラスコーリニコフという人間の人生は、フィクション以上のリアリティを持っているように見えるでしょう。

またラスコーリニコフが行った罪とは「別種の罪(悪とも呼べるでしょうか)」が多く登場するのも魅力で、その比較や対決のなかで罪(悪)という存在の根本を発見できるような気もしますね。

そしてこの本の面白いところが、本当にラスコーリニコフは事件を起こす必要・権利があったのか?この殺人には意味がなかったのではないか?という感覚を、きっと多くの読者が受け取れる点です。

彼は確固たる意志を持って殺人を成し遂げましたが、そこにつけ足していく理由のどれもが物語の進行とともに、もろく崩れやすいものとなっていくように見えました。

21世紀となった今では、少なくとも彼の行動に共感を覚える人は少ないでしょう。

それでも罪と罰に書かれている多くの苦悩や希望は、きっとこれからの世界でも受け入れられ、今でも真剣に考える価値のあるものとなっています。

特にこの物語のヒロインでもあるソーニャとの交流やそこから何とか2人の手で救い出した感情の存在は、罪と罰をいつまでも色褪せない傑作に昇華させた理由だといえるでしょう。

罪を犯したから彼女との交流が叶ったのか、それとも罰がなければ2人にはもっと違った未来が待っていたのではないか、それを想像するは読者の仕事となります。

長くなりましたがこの罪と罰には、人間性を極限状態でひねり出すような激しい痛みが存在しているので、ぜひ頭を悩ませながら読み進めてみることがおすすめです。

罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: フョードル・ミハイロヴィチドストエフスキー,亀山郁夫
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/10/09
  • メディア: 文庫
  • 購入: 11人 クリック: 64回
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白痴

白痴 1 (光文社古典新訳文庫)

純粋無垢の権化ともいえるようなムイシュキン公爵が膨らませるロシアの世界観は、「白痴」という小説の根底であり、そして現代にまで続く人間の善性に関する疑念や希望を表しているのではないでしょうか。

白痴という言葉通りの人間であるように見えて(実際彼は療養をしていた)、聡明で深い思想を持っているムイシュキン公爵に多くの人が心を惹かれ、同時に振り回されていく様子からは、ドストエフスキーの書く新しいエンターテイメント性を感じられます。

ドスンと重たいテーマが眼前に置かれるようなことが多い著者のなかでも、それなりに肩の力を抜いて読める小説だといえるでしょう。

それでもムイシュキン公爵の親友となるロゴージンとのあらゆる場所での邂逅からは、緊張を感じずにはいられません。

イエスキリストのイメージを持つムイシュキン公爵と、悪魔的な立ち位置にいるこのロゴージンの交流は、物語の手綱を最初から最後まで引き締めてくれるでしょう。

他にも病に侵された青年イッポリートとの激論や、虚言癖によって周囲を混乱させるイヴォルギン将軍の存在が、白痴という小説のなかで読者を飽きさせないギミックとして作用しています。

まっさらな善性のなかにいるムイシュキン公爵が飛び込んだロシアの世界が、現代の感覚を持った私たち読者にどう響くのか、ぜひ体感してみることがおすすめです。

白痴 1 (光文社古典新訳文庫)

白痴 1 (光文社古典新訳文庫)

<恋愛小説の側面から見えるドストエフスキー節>

白痴の物語は、根本的に恋愛小説だと思います。

聖人君子のようなムイシュキン公爵が唯一非難される間違い、それが物語のヒロインであるナスターシャへの恋です。

親友であるロゴージンと想い人を同じとしてしまった公爵は、多くの失意と事件のなかに放り込まれ、その生存の意味を改めて問われることになります。

この恋をした相手であるナスターシャがまた面白く、圧倒的な美貌によって多くの支持者を得ながら、非常にニヒリズム的な言動を繰り返す一面も持っているという、一筋縄ではいかない相手です。

ムイシュキン公爵に好意を寄せるアグラーヤの存在もあり、物語の恋愛は二転三転していき、ついには小説としての結末に向かっていきます。

ムイシュキン公爵とロゴージンが交わす終焉のシーンは、ひどい狂気のまっただなかであるのに、胸を揺さぶるような切なさも感じられるでしょう。

白痴というタイトルが何を指し、そして誰を示しているのかを考えることが、この本を読み解くひとつのコツだと思います。

登場人物たちを見下した表現であるようで、むしろその純粋さに感銘しているのではと思わせる底の深さは、さすがドストエフスキーといったところ。

仮にこの小説のタイトルが「純粋」でも成立したのでは?と私は思いますが、みなさんは読後この表題にどのような感想を抱くでしょうか。

白痴 1 (光文社古典新訳文庫)

白痴 1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

圧倒的知名度を誇るドストエフスキーの傑作小説である「カラマーゾフの兄弟」には、神秘的ともいえるような魅力が備わっています。

最低最悪の父親として描写されるフョードル・カラマーゾフと、その息子たちの物語である本作は、さまざまな思惑と私怨によって強引に突き動かされるような内容となっています。

一見すると父殺しという重たいテーマと、「誰が殺したのか?」「スメルジャコフとは一体?」といったミステリー的な面が強く見られるかもしれません。

しかしカラマーゾフの兄弟最大の魅力はひとつひとつのシーンに表現される「印象の強さ」であり、どこまでも深読みできるように設計された奥行きのある物語構造だと思います。

極論をいえばひとつのシーンを適当に抜き出しただけでも、それなりに面白く読めてしまうのがこの小説のすごいところだろ感じるのです。(もちろん、キャラクターの関連性や物語の詳細を知っている必要はありますが)

イワンとアリョーシャが神について語る「大審問官」のシーンや、ゾシマ長老の遺体に起こる「異変」のシーンなどは、特に読者を惹きつけると思います。

それぞれのキャラクターが何を思い、なんのために行動しているのかがわかれば、この物語の面白さがより理解しやすくなるでしょう。

実行者?である長男ドミートリィ、暗躍する次男イワン、そして傍観者としての三男アレクセイ。

特にこの3人の人物像と関連性に注視して、それぞれのシーンが描く存在感に触れてみることをおすすめします。

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

<カラマーゾフは続編がある?>

一応カラマーゾフの兄弟は今出ているもので完結していますが、実は続編の構想があったとされています。

私たちが読んでいるものを第1部とし、それから13年後の舞台を第2部とする予定だったそうです。

そのため本作からは、第2部につながったのでは?と想像させるような要素を見つけることができ、それぞれが自由にその後をイメージすることもできます。

特にアレクセイは第2部における主役であったという話から、彼の言動や心理的な変化を読み解くのは面白くなるでしょう。

残念ながら続編が書かれることはもうあり得ませんが、その代わりいつまでも想像を許してくれるので、カラマーゾフの兄弟がドストエフスキーの魅力を永久不滅のものとしてくれるかもしれませんね。

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

白夜

白夜/おかしな人間の夢 (古典新訳文庫)

ドストエフスキー小説が得意とするキャラクターの情熱や感情の表現が存分に感じられる「白夜」も、短編でありながら十分な魅力を備えているおすすめ小説となっています。

感情の激流が読んでいる人を主人公の空想の世界に連れていくようで、気づいたときには彼の持つ感覚やイメージに包み込まれていることがわかるでしょう。

難解な場面やテーマ性はほとんどなく、純粋な恋愛を物語とした軽快な文章が特徴であるため、ドストエフスキー作品のなかでも特段に読みやすい作品です。

とにかく表現力豊かで、感情を隠さないその繊細な書き方に好感が持てるので、初めてドストエフスキーを読むのならこちらの白夜をおすすめします。

段々と切なさが増していくこの物語からは、ドストエフスキーという作家の意外な一面を垣間見ることができるでしょう。

白夜/おかしな人間の夢 (古典新訳文庫)

白夜/おかしな人間の夢 (古典新訳文庫)

貧しき人びと

貧しき人々 (光文社古典新訳文庫)

貧困のなかで生きる主人公マカールと、同じく困窮した生活を過ごすワーレンカの往復書簡を描いた「貧しき人びと」も、おすすめしたくなるドストエフスキー小説です。

読んでいるだけで思わず暗澹な気持ちになるような貧しさのなか、それでも人間性や善の意識を失わない2人の生き方やプライドが、最後の希望であると同時に絶望の理由であるように感じられます。

貧困にまみれて尊厳や命が奪われていく様子からは、息をのむほどの緊張感が嗅ぎとれるのではないでしょうか。

むしろやりすぎというか、もう現代の日本に住む私たちには想像の範囲外にある貧困が書かれるため、ときには首をかしげたくなるような気持ちになるかもしれません。

もっとうまく立ち回れたのではないか。もっとできることがあったのではないか。

しかしそういったことを思わせながら、どうにもならないほどの重さを持つ貧困を書ききったのが本作の魅力です。

これがデビュー作ということも衝撃ですが、ここで書かれている貧困の土台が、その後罪と罰やカラマーゾフの兄弟につながっているようにも思えるので、ドストエフスキーに興味があるのなら1度は読んでおきたい本になるでしょう。

「貧困とは不幸であり、個人の人生における罰のようなものなのか」「貧しき人びとという小説が描く問題は、果たして人間社会が克服できるものなのか」

そんなことをふと考えてしまうほど、夢中になれる瞬間がこの小説にはたくさんありますよ。

貧しき人々 (光文社古典新訳文庫)

貧しき人々 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: フョードル・ミハイロヴィチドストエフスキー,安岡治子
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/04/08
  • メディア: 文庫
  • 購入: 1人 クリック: 1回
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ドストエフスキーを読むときのコツ

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物語のマップを作る

ドストエフスキーの本を手に取って最初に思うのは、おそらく「分厚い!」ということでしょう。

しかもそれが上中下巻、もしくはそれ以上に続くのですから、正直読む側としてはもうたまったものじゃありませんね。

そういった文章量に挫折しないようにするためにも、ときどきは読書を中断して、物語のマップを作成してみるのがおすすめです。

例えばキャラクター同士の相関図を書いたり、「○○と相思相愛」「○○に憎まれている」といった簡単なコメントをメモしておくと読みやすくなります。

キャラクターの心理的な変化がわかると面白く読めるので、できるだけそのときの自分なりの解釈を書き記しておくのもコツです。

よくあるのが久しぶりに読書を再開したとき、誰がなにをしゃべっているのかがまったくわからないシーンから始まってしまうというパターンでしょう。

流し読みをしてしまえばさらに内容はわからなくなり、結果的に中断を余儀なくさせられることも珍しくはありません。

物語の迷子になることを防ぐためにも、定期的に物語を整理して、自分なりの簡易マップを作っていくことがおすすめです。

後半に解説がある本の場合は、同時進行で読み進めていくのもいいですね。

キャラクターをカテゴライズする

ドストエフスキー小説には、本当にたくさんのキャラクターが登場します。

そのキャラをしっかりと把握することができないと、なかなか物語に集中することができないでしょう。

小説を読む際には登場人物に簡単な役割や印象を与えて、イメージしやすいようにカテゴライズしていくのがコツとなります。

単純に「善悪」や、主人公に対しての「敵味方」で分けるだけでも、物語の全貌を把握しやすくなるでしょう。

そこからさらに「気弱」や「ずるがしこい」といった特徴をつけていくことができれば、キャラクターの造形を詳細にイメージできるようになります。

アニメや映画俳優を当てはめるのも有効で、近いキャラクターがいるのなら遠慮なく利用していくのがおすすめです。

またドストエフスキーのキャラクターは全員ロシア名であるため舌を噛みそうな名前が多く、本名とは別のあだ名で呼ばれることもあります。

アレクセイ=アリョーシャのように同一人物の呼び名をまとめておくことも、読書のコツとなるでしょう。

ドストエフスキーは難しいのか?

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難しいことは間違いない

基本的にドストエフスキーの小説は難解で、さらには読みづらい書き方もされています。

数ページにわたって改行が1度もされないということも多く、キャラクターが何を考えているのか、何を真意としているのかが、1度で読み取れないことも珍しくはありません。

「悪霊」ではロシアの社会的な要素や空気感を把握することも求められるので、下準備が読書の感想を左右することもあるでしょう。

しかし難しさのなかにはたくさんの面白さがあり、何度でも読み返す理由を見つけられる人も多いと思います。

慌てずに時間をかけていくことが、ドストエフスキーを味わうときのポイントになるでしょう。

近年の翻訳本は読みやすいものがたくさんあり、解説なども丁寧でドストエフスキーを理解するサポートをしてくれます。

これから読むのであれば「光文社古典新訳文庫」版がおすすめできるので、まずは中身を軽くチェックしてみてください。

関連本もおすすめ

ドストエフスキー文学をより深く知るためには、関連本に手を出してみるのもおすすめできます。

作者の生涯は小説の多くの場面にリンクしているので、外堀を埋めることで内容が頭に入りやすくなるということもあるでしょう。

「ドストエフスキー 人物事典」や「ドストエフスキー: 新たなる伝説(仮) 」などを読んで、小説を読むための下地を作っておくのもいいですね。

もちろんできるなら1から小説を読んだ方がその衝撃を楽しめるでしょうが、ドストエフスキーに限っては、最初に物語全体をあらすじで軽く読み通してしまうのもひとつの手段となります。

難しくて挫折するくらいなら、事前に物語の展開を把握したり、関連する本で知識をつけたりする方が、よっぽど読書を楽しめることでしょう。

ドストエフスキー人物事典

ドストエフスキー人物事典

ドストエフスキー: 新たなる伝説(仮)

ドストエフスキー: 新たなる伝説(仮)

まとめ

一冊一冊の解説量がいつもより多くなってしまいましたが、ドストエフスキーの作品は、やはりそれくらい語りたいことに満ちている小説だと思うのです。

読み通すのが難しい分、読み切ったときの感動も大きいので、ぜひこの機に今なお色褪せない名作たちに触れてみることをおすすめします。

この記事を書いた人

syunkin
ガジェット、書籍、仮想通貨などを専門に執筆しているフリーライターです。新しい情報を読む楽しさを、少しでも提供できたらうれしく思います。
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