エスプロマガジン

デキる男 応援マガジン

【読みやすいものを厳選】ロー・ファンタジー小説のおすすめ10選!現代に密接した幻想を楽しもう

幻想的な世界観や要素が盛り込まれたファンタジー小説は、いつの時代も他にはない魅力を備えた特別なジャンルとなっています。

きっとハリーポッターや指輪物語など有名なファンタジー作品に、こころを奪われた人も多いことでしょう。

しかし剣と魔法が交差するようなコテコテのハイ・ファンタジーは巻数が多かったり、その独特な世界観を把握するのが大変だったりと、なかなか読むのが難しいジャンルとなっているのも事実です。

そこで今回はそういった日常と幻想が上手に混ざりあったロー・ファンタジー小説を中心に、10選のおすすめ作品を紹介してみたいと思います。

近現代だからこそ生まれたストーリーは読みやすいものが多いので、この機に新規の小説を楽しんでみてはいかがでしょうか。

ロー・ファンタジー小説のおすすめ10選!

ロー・ファンタジー小説のおすすめ10選

太陽の塔

太陽の塔 (新潮文庫)

唯一無二の文体と幻想(妄想)世界が売りの作家森見登美彦が書く「太陽の塔」は、個人的にとってもおすすめしたいファンタジー小説です。

ファンタジーノベル大賞を受賞した作者のデビュー作でありながら、日常に自然と現れるファンタジー要素の数々は熟練ミステリー作家が描くトリックのように読者を魅了してくれます。

どこからが幻想で、どこまでが現実なのか……ひらりと読者の目を欺くような曖昧さをぜひ体感してみてください。

森見登美彦作品は主人公の自由気ままな独白や阿呆なスタンスも魅力のひとつで、そのユニークさに大いに笑うこともできるでしょう。

終始ふざけているような面白さが続くのに、突然そっと切なさが刺し込まれるストーリーもまた、ファンタジーのような幻想感を作り出します。

国内ロー・ファンタジーのなかでも傑作レベルの作品をたくさん出版しているので、ファンタジー小説に興味があるのなら森見登美彦は要チェックでしょう。

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

夜行

夜行

2連続で森見登美彦作品となってしまいましたが、太陽の塔とはまた別のベクトルのファンタジーを形作る「夜行」も、現代幻想小説としておすすめします。

ホラー的な雰囲気とミステリーのような謎、そしてそれらをすっぽりと包みこむファンタジーの気配。

夜行はそんなあらゆるジャンルから特有の不思議さを吸収することで、独自の世界観を作り上げた名作となっています。

「宵山万華鏡」や「きつねのはなし」など、実はホラー風味も得意分野である作者が絶妙なバランス配分によって書きあげた夜行は、国内のファンタジー小説として格別の面白さです。

ファンタジーと「薄気味悪さ」の相性が良いことをあらためて認識できる本でもあるので、ホラーよりの小説に挑戦するきっかけになるかもしれません。

夜行

夜行

鴨川ホルモー

鴨川ホルモー (角川文庫)

意味を超越したぶっとんだファンタジー、それをここまで現代の世界に落とし込まれると、もう読むのが楽しくてたまりません。

万城目学の書く「鴨川ホルモー」は、馬鹿馬鹿しいほどの勢いによって着想された日本ファンタジー小説として、今後もおすすめされる小説となるでしょう。

京都という土地とオニを使ったホルモーという競技の設定が完ぺきにマッチしているためか、読んでいけば自然と小説の世界を受け入れられるのがすごいところ。

まったくリアルではないのに、決して嘘くさくはない。

読者の気持ちを高めてくれる堅実なファンタジー感が、楽しんで読むという簡単なようで難しい体験をさせてくれることでしょう。

とにかくパワーに満ちている小説であるため、気持ちが沈んでいるときや鬱屈した気分のときに読むと、その力がエネルギーになるかもしれませんよ。

鴨川ホルモー (角川文庫)

鴨川ホルモー (角川文庫)

新世界より

新世界より(上) (講談社文庫)

貴志祐介の代表作となっている「新世界より」もまた、日本のファンタジー小説として安定した面白さを作り上げています。

しっかりとした土台の上で物語が機能する小説となっているので、SFやファンタジーの要素を「当たり前に感じる」ための時間が用意されていて、こころに染み込ませるようにじっくりとその世界を読んでいけるのが特徴。

1000年後の世界で呪力という特殊な力を持てるようになった人類は、新たにどのような問題に直面するのか。

そういった物語に引き込まれていくにつれて、気づいたときには小説のなかで生きるキャラクターたちの声が、はっきりと聞こえるようになることでしょう。

中盤以降の展開は息継ぎをさせないようなスピード感、そしてドラマティックを通り越した衝撃のラスト、それらが惜しみもなくつぎ込まれていくのだから名作でないわけがない。

作中の課題や考え方はどこかで私たちの教訓となり得るので、読後の感覚は特別なものとなるかもしれません。

日本SF大賞を受賞しているため厳密にファンタジーとしての定義に収まるのかはわかりませんが、普通ではないことが物語を満たしているのはたしかです。

とにかくまずは現実のなかにひとつの世界をまるまる作り上げた貴志祐介の筆力を、ぜひ体感してみてください。

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(上) (講談社文庫)

傷物語

傷物語 涜葬版

ライトノベルはファンタジーを取り扱う媒体として非常に有力なものですが、どうしても単純化されやすいため経験上読み応えの薄い作品に行き当たることも多いです。

しかしなかには西尾維新の「物語シリーズ」のように、素晴らしい魅力を持ったロー・ファンタジーも存在してるので、幻想小説に興味があるのならライトノベルもまたおすすめされます。

特にシリーズの原点となる「傷物語」は、吸血鬼ファンタジーとして新しい形を作り出した名作といって差し支えないでしょう。

吸血鬼の眷属となった阿良々木暦の苦悩と課題を読んでいると、「生存」について、そして「人間」について考えさせられてしまいます。

少年漫画のような展開が小説としての好き嫌いを別けるかもしれませんが、ライトな雰囲気に隠されたその奥行きの深さは、「読ませる」力となって感じられるでしょう。

傷物語だけでも楽しめる完成度を持つ一方、「化物語」⇒「偽物語」⇒「猫物語(黒白)」くらいまで読むと、よりキャラクターたちを好きになれます。

私自身は「終物語」まで読破しましたが、「正義」を語る物語として、そして何よりも青春小説として、とてもこころに残る作品だと感じました。

おそらくアニメの方が有名なシリーズでもあるので映像作品から入るのもおすすめですが、小説には小説の良さが間違いなくあるため、文字を入り口とした西尾維新の世界にもぜひ触れてみてください。

傷物語 涜葬版

傷物語 涜葬版

アルケミスト

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

ブラジルから世界に発信されたパウロ・コエーリョの「アルケミスト」も、じっくりと物語を語ることができる名作ファンタジーです。

夢を軸に人生を始める少年がさまざまな経験を通して成長していく物語は、童話的でありながらどこか生に関する核心に迫っていくような雄大さを感じさせます。

読み終えることで何かの「実感」を得られるような深みのある内容となっているので、読書に特別な意味を持たせることができるかもしれません。

この小説をファンタジーとして紹介していいのか悩みましたが、この小説が帯びている空気は、少なくとも「現実ではない」といえます。

それでいて想像できるリアルさにしっかりと足がついている物語なので、ファンタジーとして、冒険小説として、はたまたひとりの少年の伝記として、あらゆる角度から楽しむことができるでしょう。

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

片腕

川端康成集 片腕―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)

川端康成の短編小説「片腕」は、恐ろしいほどの吸引力を持ったファンタジー小説であると断言できます。

日本古来の怪談を美しく、それでいて残酷に描いた片腕は、読んでいるとどんどん世界に巻き込まれていくかのよう。

「片腕を一晩だけ借りる」という発想がいったいどこから出てくるのか不明過ぎて、とにかく唖然とさせられてしまいます。

これは現実を見て書いたのか、それとも魔界のような場所に入りこんで書いたのか、そんな想像をさせるのは川端康成だからでしょうか。

ちくま文庫の本には川端康成が書いたたくさんの短編がまとめられているので、表題作の片腕と合わせてさまざまな小説を楽しめます。

官能的かつファンタジックな小説が、あなたのなかにある日本文学の印象を変えてくれるかもしれませんよ。

川端康成集 片腕―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)

川端康成集 片腕―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)

死神の精度

死神の精度 (文春文庫)

死をつかさどる死神という立場から人間を観る伊坂幸太郎のファンタジー作「死神の精度」も、おすすめの小説としてご紹介できます。

暗く重たい死という概念を、死神という感性によって改めて書き直した内容は、幻想小説だからこそ成し得た芸当でしょう。

ポップでズレた感覚が死をより浮きだたせるようで、読んでいるとさまざまな感情が自分のなかに生まれてくるようでした。

スラスラと読めるテンポの良い作品でもあるため、ファンタジーの雰囲気に不慣れでも安心して楽しめるでしょう。

本作は「死神の浮力」に続いていく作品でもあるので、千葉という死神に惹かれたならぜひ続編もチェックしてみてください。

死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

変身

変身 (新潮文庫)

平凡な男がある日醜い虫になるというストーリーがあまりにも有名であるフランツ・カフカの「変身」は、ひとつのファンタジーとして受け取ることもできる小説です。

虫になってしまったことによる物質的な問題以外は、すべて日常と変わらないままでいるのがこの小説の見どころ。

主人公が虫になったせいでできなくなること、虫になったからこそ変わる周囲の反応などは、とことんまでリアルな内容となっています。

ファンタジーであるのは冒頭だけ、後はひたすら現実的な問題と向き合っていくこの展開は、読んでいてさまざまな解釈を生むことになるでしょう。

虫という存在がグロテスクな感情を刺激するせいか、主人公の家族の対応や感情に不快感がプラスされていくのも本作の特徴。

読み切ったとき虫になったグレーゴル・ザムザに対してどのような感情を自分が向けることになるのか、ぜひ確認してみてください。

変身 (新潮文庫)

変身 (新潮文庫)

騎士団長殺し

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

ファンタジー小説を書くことが目的ではないとしても、結果的に幻想的な要素が入り込んだのなら、それもまたひとつのファンタジーと認識することができます。

形而上的な世界をファンタジーのような描写で書き下ろした村上春樹の「騎士団長殺し」は、そういった意味で現実世界に幻想をすべりこませた傑作です。

リアルの生活に変更を余儀なくされた主人公が、次々と出会うファンタジックな現象たち。

その現象そのものに意味があるのではなく、それによって仮初に表現された「形式」にこそ意味があると思えるため、幻想的な文章をどこまでも現実的に深読みすることができます。

なんのためにこんな物語が書かれたのか、とことんまで考察してみることでよりこの小説は面白いものとなるでしょう。

村上春樹はこれまでに「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」でふたつの幻想世界を同時に描き、「ねじまき鳥クロニクル」や「海辺のカフカ」や「1Q84」で現実に介入してくるファンタジーを書いてきました。

そんな筆者がまた改めて幻想的な要素を取り入れた本作には、時間をかけて読み解くだけの価値があると思われます。

独特の語り口による読みやすさは相変わらずなので、スムーズに物語を楽しむこともできるでしょう。

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

そもそもファンタジー小説って面白いの?


線引きが難しいジャンル

ファンタジー小説とは、非常に線引きが難しい文学のジャンルだと私は感じています。

単純に魔法やドラゴンが登場するものはもちろんファンタジーですが、今回ご紹介したおすすめ作品たちのように、「現実を舞台にちょっとした不思議が登場する」小説も、十分にファンタジーを名乗る資格があるといえるでしょう。

しかしそれらの小説はファンタジーものとして紹介されていることが少なく、何となく宙ぶらりんな状態でカテゴライズされていることが多いようです。

そのため「こんなにファンタジー要素があるとは思わなかった」という評価を下す人も少なくなく、それが国内におけるファンタジー小説の難しさにつながっているのではないでしょうか。

リアルな小説もファンタジーを含んだ小説も面白いものは面白いのですが、「そういった内容を読むつもりだったかどうか」という気持ちは作品の読みやすさに直結します。

そういった事情があるからこそ、ファンタジー小説を読みたいときもそうでないときも、事前にその小説の情報を集めておくことがおすすめです。

ファンタジー的な展開があるのだなとわかっていれば、スムーズにその世界に身をゆだねることができます。

純粋に物語を楽しめるので、読書に慣れていないうちは可能なかぎり事前準備を進めていくといいでしょう。

ファンタジーに慣れておくことは大切

ファンタジー的な描写や表現は、海外ではもちろん、日本文学においても長く親しまれているものとなっています。

そのため割と多くの小説のなかで、ファンタジーの要素に出会うことがあるでしょう。

そのたびにいちいち反応しているとせっかくの物語を楽しめなくなってしまうため、ある程度読書を重ねてファンタジーに慣れていくことをおすすめします。

ファンタジー要素を取り入れたり、現実的な内容から離れていったりする展開は、基本的にその作品を引き立てるものとなるはずです。

それを「リアルじゃない」という一言でないがしろにするのは、ちょっともったいないことだといえるでしょう。

小説は文字だけが使われる物語だからこそ、幻想的な世界やイメージを、現実のなかに突然ポンと放り込むことができます。

独特のメリットであり、文章が持つ武器でもあるこのファンタジーとの親和性には、ぜひ理解を深めておきたいですね。

まとめ

ファンタジー小説が持つ可能性は、物語を大きく羽ばたかせるきっかけとなります。

それは意外なほどたくさんの物語のなかで見かけることができるので、ぜひこの機にファンタジーの魅力を読み漁ってみてはいかがでしょうか。

特に現実に近いロー・ファンタジーは、時代が進むほど新しいパターンの出現に期待できます。

今後どのようなファンタジーが生まれ、そして評価されるのか、楽しみにしながら追いかけていきましょう。

この記事を書いた人

syunkin
ガジェット、書籍、仮想通貨などを専門に執筆しているフリーライターです。新しい情報を読む楽しさを、少しでも提供できたらうれしく思います。
書いた記事の一覧へ