火災を含め様々な自然災害による家の損害に対して修理費用を補償してくれる「火災保険」。家が損害を受けた際に、保険金でリフォームをしようかと考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、火災保険はあくまで原状回復するための修理費用を補償してくれるだけで、リフォーム費用を補償してくれるわけではありません。この点、勘違いしている方は少なくないでしょう。
ここでは、まず修理とリフォームの違いを説明し、その上で保険金が支払われるケースや受け取るまでの流れ、修理・リフォーム業者選びのポイントなどについて詳しくご説明いたします。
- 修理とリフォームの違い
- 火災保険で対象となるケース
- 保険金の請求から受け取りまでの流れ
- リフォーム後は火災保険の料金が見直される
- 火災保険を悪用した詐欺が急増している
- 修理・リフォーム業者選びのポイント
修理とリフォームの違い
修理とリフォームは混合してしまいがちですが、それぞれで意味合いが異なります。修理は「壊れたものを元の状態に直す」こと、リフォームは「改築して元の状態よりも良くする」ことを指します。
台風によって屋根が壊れた場合で例を挙げると、破損した部分のみを直して壊れる前の状態に戻すのが「修理」、壊れた部分だけでなく全面的にデザイン性の高い瓦に変更したり、屋根に防水塗装をするなど機能性を高めるのが「リフォーム」となります。
火災保険は「現状回復」にのみ適用となる
火災保険では現状回復にかかる費用を負担してくれるものです。つまり火災保険は「修理」に適用となり、「リフォーム」には適用となりません。
保険金を受け取るために申請が必要で、申請書と一緒に修理見積書または修理報告書を提出しなければいけず、保険金を修理前に受け取るには修理見積書、修理後に受け取るには修理報告書を提出します。
この見積書・報告書に記載の金額は修理にかかるもので、保険金は見積書・報告書に記載の金額しか補償してくれません。(厳密に言うと、保険金は記載の金額が妥当かどうかを判断した上で決定される)
保険金をリフォームに使うのは自由
保険金は原状回復させるための修理費用であることから、基本的には修理に使うことになります。しかし、受け取った保険金を何に使うかは自由です。
極論を言えば修理をしなくてもよいですし、リフォーム費用に充てても問題ありません。ただし、リフォームには修理以上に費用がかかってしまうものです。
保険金は修理費用分しかもらえないので、リフォームにかかる費用は自己負担となってしまいますが、それでもよいという場合にはリフォームをするというのも一つに選択肢になるでしょう。
火災保険で対象となるケース
火災保険は様々な自然災害で受けた損害に対して補償してくれる保険ですが、自然災害以外に補償対象となる場合もあります。ではどのようなケースが対象となるのでしょうか。一般的には以下の9つのケースが補償の対象となります。
補償範囲 |
補償内容 |
火災 |
失火、もらい火、放火などによる火災の損害を補償 |
落雷 |
落雷による損害を補償 |
破裂・爆発 |
ガス漏れなどによる破裂・爆発の損害を補償 |
風災・雹災・雪災 |
風災(台風・旋風・暴風・暴風雨など)、雹(ひょう)、雪災(豪雪・雪崩など)による損害を補償 |
建物外部からの物体の飛来・落下・衝突 |
家への自動車の衝突などによる損害を補償 |
給排水設備の不備による水濡れ |
給排水設備の事故、他人の戸室で起きた事故に伴う漏水などによる水濡れ損害を補償 |
騒じょう・集団行動・労働争議に伴う暴行 |
集団行動などによる暴力行為、破壊行為による損害を補償 |
盗難 |
盗難に伴って建物に生じた盗取・損傷・汚損などの損害を補償 |
水災 |
台風や豪雨などに伴う洪水、高潮、土砂崩れなどによる損害を補償 |
不測かつ突発的な事故(破損・汚損) |
ドアに物をぶつけて壊したなど偶然な事故による損害を補償 |
対象となる自然災害には「火災」「落雷」「風災」「雹災」「雪災」「水災」があります。勘違いしやすいのが「地震」で、地震そのものや地震を原因となる津波や土砂崩れなどは対象となりません。この場合は地震保険が適用となります。
また、経年劣化によるものや建物以外(人間のケガなど)も対象とはなりません。経年劣化に関しては、自然災害などによる損害と見分けることが難しく、たとえば築50年の家の屋根が台風の影響で破損した場合、原因が台風であっても経年劣化と捉えられることも珍しくはありません。
保険金の請求から受け取りまでの流れ
保険金を受け取るには電話などで請求しなければならず、その際に申請書や損害箇所の写真、修理見積書、報告書などの書類を提出が必要となります。
- 自然災害などで損害を受けた旨を保険会社に連絡する
- 保険会社から請求に関わる書類を受け取る
- 契約者が必要書類を揃えて提出する
- 保険会社が損害状況を確認し、保険金を算出する
- 保険会社から契約者の所定の口座に振り込まれる
必要書類: 保険金請求書類、損害箇所の写真・画像データ、修理見積書・報告書、罹災証明書 |
このような流れを踏んで保険金を受け取ることになりますが、必要書類の中に「修理見積書」「修理報告書」があります。どちらも修理業者が発行する書類で、すでにお話したように、修理見積書は“修理前”に発行されるもの、修理報告書は“修理後”に発行されるものです。
つまり保険金を請求するのには、「修理する前に請求する」場合と「修理した後に請求する」場合の2通りがあるのです。では、どちらを選んだら良いのでしょうか。
保険金を受け取った後に修理するのが良い
結論から言うと、保険金を受け取った後に修理するのがよいでしょう。なぜなら、保険金を請求したとしても損害状況によっては補償されない場合がありますし、補償されても修理に要した金額全てを受け取れるとは限らないからです。
また、修理業者選びを間違うと高額な費用を請求されてしまい、その費用が妥当とは判断されず、保険金が修理費用を下回る形になってその差額を自己負担しなければならないこともあります。
これは保険金を受け取った後にも起こりえますが、いずれにせよ保険金を受け取った後の方がリスクが低いので、保険金を受け取った後に修理するのが得策です。
しかし、場合によっては修理を先にした方が良いケースもあります。たとえば屋根が破損してそこから雨漏りがしたり、窓が割れて雨が入ってくるような場合です。このケースでは保険金を受け取るまで待つと長く生活に支障をきたしてしまうので、早めの修理が勧められます。
保険金を受け取るまで1か月ほどかかり、そこから修理にも日数を要するので、損傷箇所の状況から修理を先にするのか後にするのかを判断するようにしましょう。
リフォーム後は火災保険の料金が見直される
リフォームをすると家の価値が変わることがあります。そして家の価値が高くなればなるほど火災保険料も高くなっていきます。
ただし、全面の壁紙を張り直すなど、修理の延長で行うような小さなリフォームであれば価値が高まることはほとんどありません。
家の主要構造物に手を加えたり、増築して床面積が増加するなど大がかりなリフォームをして、それによって住みやすくなったり家の寿命が長く延びるような場合に価値が高まります。
また、家の価値は固定資産税にも影響し、家の価値が高まれば高まるほど高額になります。リフォーム後には様々な費用負担が増えるということを認識した上で、リフォームをするか否かを検討するようにしましょう。
火災保険を悪用した詐欺が急増している
今も昔も様々な詐欺が横行していますが、近年では火災保険を悪用した詐欺が増えているといわれています。具体的には「火災保険で無料でリフォームができる」というもの。
すでにご説明したように、火災保険は自然災害などで損害を受けた箇所の修理分を補償してくれるもので、リフォームにかかる費用は補償してくれません。
また、修理見積書・報告書に記載の金額全てを補償してくれるとは限らず、損害箇所と修理費用の妥当性を判断した上で保険金が決定されます。
もし無料でリフォームができるとセールスされたら、それは詐欺もしくは信頼のおけない会社なので、契約しないようにしてください。
修理・リフォーム業者選びのポイント
リフォーム詐欺だけでなく、通常の修理・リフォームにおけるトラブルも多発しています。
多くは優良な業者ではありますが、一部では修理費用を大きく増やしたり、手抜き工事をしたりする業者もいるので、自然災害などで損害を受けて修理・リフォームを頼む際にはしっかりと業者選びをしなければなりません。
では、どのように業者を選んだらよいのでしょうか。そのポイントには大きく以下の4つがあります。
現地調査をしっかりした上で見積ってくれる業者
修理・リフォームを依頼する際には、まず電話などで受付を行い、その後に作業スタッフが家に来訪し損傷箇所や改築に関する調査を行います。
調査が終わると見積もりや作業の説明をされますが、業者によっては現地調査をせずに見積もりを提示したり、簡単な調査のみで済ますことがあります。
しかし、修理であれば損傷の原因の詳細を把握するために入念な調査が必要ですし、リフォームでも依頼主の要望をしっかりと踏まえた上で作業にとりかかるために入念な話し合いが必要不可欠です。そのため現地調査を疎かにする業者は信用に値しません。
このような業者に依頼すると、見積りと実際の修理費用が大きく乖離したり、手抜き工事をされたり、要望に沿わない形で作業されてしまう可能性があるので、必ず現地調査をしっかりと行う業者と契約するようにしましょう。
相談や質問に親切・丁寧に答えてくれる業者
依頼主としては損害を受けて困っていますし、リフォームの場合には自分の家を良くしたいという強い思いがあるわけですが、中には依頼主のことを全く考えずに利益重視で作業をする業者もいます。このような業者には気分よく任せられませんし、手抜き工事などトラブルの元になってしまいます。
修理の場合、どのような修理にどのくらいの費用がかかるのかは見積書に記載されていますが、見積内容が不透明であったり、分からないことを質問しても答えが曖昧なケースは注意が必要です。
依頼する側としてはしっかりと作業に取り組んでもらいたいものなので、まずは疑問を残さないよう些細なことでも質問を投げかけてみてください。少しでも不安があれば契約しない方がよいでしょう。
契約を急かさない業者
契約を急かさない業者を選ぶのも非常に大切です。損害状況などは私たち素人ではよく分からないので、「これは危険な状態だ」と言われるとそう思ってしまうものです。
しかし、業者によっては契約を急かすための文句として、実際にはそれほど危険でなくても危険と言ったりすることがあります。
見積もり後に契約を急かしてくるのは、単に工事の予定が多く入っている場合もありますが、他社との比較や検討する時間を与えないために急かすこともあります。
保険金の請求から受け取りまでは1か月程度かかり、受け取った後に修理する場合は業者に修理見積書を発行してもらい他の必要書類と一緒に保険会社に提出しますが、見積書の発行元の業者と実際に修理する業者が異なっていても問題はありません。
契約を急かすような業者は怪しいところも多いので、注意しておくようにしましょう。また、大規模な修理を勧めてくる業者も避けておきましょう。
地域密着型の小規模な業者
これは一概に言えるわけではありませんが、全国規模の業者よりも地域密着型の小さな業者の方が比較的に安心かもしれません。というのも、地域密着型の小さな業者はその地域の信用の上に成り立っているからです。
もし手抜き工事を一つでも行い、その悪評判が地域に広まってしまうと経営がうまくいかなくなる危険性があるので、丁寧な仕事が求められているわけです。
修理やリフォームが必要になった時には、友人などにその地域の業者について聞いてみて、評判が高いところがあればその業者に依頼してみてはいかがでしょうか。
まとめ
火災保険は自然災害などで生じた損害に対する修理費用を補償してくれるものです。修理するついでにリフォームを行うことも可能で、その場合にはリフォーム分は自己負担となります。
近年では火災保険を使用して無料でリフォームが出来るという謳い文句でセールスする業者が出てきていますが、詐欺の可能性が高いので注意しておくようにしましょう。
また、修理・リフォームを依頼する業者選びに失敗すると、保険金を超える費用になったり、手抜き工事をされる場合があります。トラブルを避けるために、信用できないと少しでも感じたら早々に他の業者に依頼するようにしましょう。