Powマイニングで独壇場の「ASIC」の性能・問題点・今後の展望など

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PoWアルゴリズムの仮想通貨のマイニングで使用される「ASIC」。汎用のCPUやGPUよりも採掘効率が格段に高く、現在ASICはPowのマイニングで独壇場となっています。

ASICはPowのマイニングで欠かせないものとなっていますが、ASICは基本的に企業向けであることから、まだまだ認知度が低く、ASICがどのようなものなのかが分からないという方は多いことでしょう。

そこで今回は、ASICの基礎知識から始めて、CPUやGPUなどとの比較、メリット・デメリット、ASICを使用したマイニングの今後の展望などについて詳しく解説いたします。

ASICとは

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ASIC(エーシック)とは、Application Specific Integrated Circuitの略で、「特定用途向け集積回路」を指します。特定用途というのはいわゆるマイニング用途のことで、集積回路は複数機能の回路を 1 つにまとめたものです。

マイニングでは、パソコンのCPUやGPUといった汎用の処理装置を使用することもできますが、汎用である分、採掘量が限定的になってしまいます。

そこで優れた採掘効率を実現するために開発されたのがASICです。マイニング用にカスタマイズすることでCPUやGPUよりも採掘効率が格段に向上。現在マイニング業界に参入する企業の多くがASIC搭載マシンを使用してマイニングを行っています。

マイニングで使用できる回路・装置の比較

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マイニングで使用できる回路・装置には、CPUやGPU、FPGA、ASICがありますが、それぞれで対応する通貨(得意とする通貨)や性能、コストなどが大きく異なります。

 

対応通貨

採掘量

電気代

CPU

広範

少ない

普通

GPU

広範

少ない

普通

FPGA

やや広範

多い

少ない

ASIC

限定的

非常に多い

多い

CPUやGPU、FPGA、ASICがどのようなものなのか、メリットやデメリットとともに以下で解説いたします。

CPU

CPUとは、Central Processing Unitの略で、パソコンの「頭脳」にあたる回路です。CPUを利用してマイニングを行うことも出来ますが、一般的なパソコンに搭載するCPUでは性能不足で、通貨をたくさん採掘することができません。

しかし、一般的なパソコンに搭載されているために、誰でもマイニングを行うことが出来るというメリットがあります。

CPUでマイニングが出来る通貨は、ほぼ全種類(現実的にはCryptnightなど一部のアルゴリズムのみ)です。手に入るCPUとしては、「I7 7700K」や「I7 8700K」などが収益性に優れています。

GPU

GPUとは、Graphics Processing Unitの略で、「画像処理」を得意とする処理装置です。これもCPUと同様に全てのパソコンに搭載されているので、パソコンさえあれば誰でもGPUを使用してマイニングを行うことが出来ます。また、一般的にCPUよりも性能が高く、より多くの通貨を採掘することが出来ます。

対応する通貨はほぼ全種類ですが、GPUのメーカー(NVIDIA製/AMD製)によって、得意とする通貨が異なります。

たとえばNVIDIA製のGeForceならビットコイン(Bitcoin)、ジーキャッシュ(Zcash)、ビットコインゴールド(Bitcoin Gold)などに強く、AMD製のRadeonならイーサリアム(Ethereum)、モネロ(Monero)、イーサリアムクラシック(Ethereum Classic)、バイトコイン(Bytecoin)などを得意とします。

メーカーごとに数多くのGPUが販売されていますが、NVIDIA製でGeForce GTX 1070やGTX 1080、AMD製でRX580などが特に収益性に優れています。

FPGA

マイニングの歴史の中で、使用する回路・装置のシェアとして、機能の面からCPU→GPUというように歩んできました。そして2011年頃に、CPUやGPUよりもマイニング効率を上げようとFPGAでのマイニングが開始されるようになりました。

FPGAは、Programmable Gate Arrayの略で、書き換え可能なシリコンチップのことを指し、CPUやGPU以上に高いハッシュレートを出しつつも、低い電力消費量を実現しています。

マイニングに特化している反面、使用にはプログラミングの技術が必要になるので、一般人が気軽に使用できるものではありません。また、後に高性能なASICが開発されたのを機に、FPGAが使われる機会が少なくなりました。

とはいえ、FPGAでのマイニング効率が非常に優れているので、現在でもFPGAの開発が進められています。

ASIC

ASICを使用したマイニングは、2012年頃から開始されました。最もマイニング効率が高いことから、現在は多くの企業がこぞってASICを使用しています。

しかし、FPGAではプログラムの書き換えが可能で、後に異なったアルゴリズムにも対応できるという柔軟性があるのに対して、ASICでは書き換えが不可能なために常に特定のアルゴリズムしか対応できません。

また、マイニング効率が高い反面、電力消費量が大きく、かなり発熱してしまうので、ASICを使用して家庭でマイニングしづらいという特徴があります。

さらに初期投資にもコストがかかってしまうので、手軽に使用できるものではありません。そのため本格的にマイニングする人向けになります。

ASICに対応するコンセンサス・アルゴリズム

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仮想通貨で使用されているアルゴリズムにはPoW、PoS、Pol、PoCなどがあります。これらは通貨によって異なりますが、ASICに対応するアルゴリズムは基本的にPoWのみとなります。

PoWとは

PoW(proof of work)とは、ビットコインなどに採用されている取引検証式のアルゴリズムで、取引検証作業の報酬として一定の確率で報酬がもらえる仕組みのことです。

報酬を獲得するためには膨大な計算量を必要とすることから、CPUやGPUなどの汎用の回路・装置では性能不足で、マイニング効率の面から現状ではASICの独壇場です。

PoWが採用されているのは、ビットコインのほかに、ライトコイン(Litecoin)やダッシュ(DASH)などで、ASICではこれらPoWの通貨をマイニングすることが出来ます。

ただし、PoWを採用する通貨が限定的であること、多くの企業がASICを使用してPoWの通貨をマイニングしていることから、PoWの通貨は総じてディフィカルティが高く、私たち一個人がPoWの通貨をマイニングする場合、たとえASICを使用しても高い収益性を望めないのが現状です。

PoW以外のアルゴリズムについて

仮想通貨に採用されているアルゴリズムには、PoWのほかにもPoS、Pol、PoCなどがあります。これらは基本的に他のアルゴリズムを改良したものです。

たとえばPoWは電力消費量が大きく、51%攻撃の懸念があるなどの欠点がありますが、PoS(Proof of Stake)ではPoWの欠点を補うために、通貨の保有量に比例して新規発行の通貨をもらえる仕組みになっています。

しかし、報酬が保有量に比例してしまい流動性が欠ける恐れがあります。この欠点を補うために開発されたのがPol(Proof of Importance)です。Polでは保有しているだけでは報酬を得られず、通貨を実際に使用して流通させることで報酬が得られる可能性が高まります。

このようにPoW→PoS→Polの順で進化を遂げてきたわけです。しかし、PoC(Proof of Consensus)においては異なった性質を持ちます。他のアルゴリズムではマイナーがいなければ成立せず、非中央集権的な仕組みになっていますが、PoCではマイナーを必要とせず、中央集権的に取引が行えます。

このことから、PoWやPoS、Polを採用する通貨はマイニングを行えますが、PoCを採用するリップル(Ripple)はマイニングを行うことが出来ません。

ASIC搭載のマイニング専用マシン

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近年、GMOが「GMOminerB2」、Bitfuryが「Bitfury Clarke」を開発するなど、様々な企業による新たなASIC搭載マシンの開発発表が立て続けに起こっていますが、シェアの大半を占めるのが中国企業であるBitmain社の「Antminer」シリーズです。

シェアの割合は公表されていませんが、おそらく90%を超えていることでしょう。ASICと言えばAntminerを指すほどに有名で、マイニングを行う多くの企業もAntminerを使用しているほどです。世に出回る多くのASIC搭載マシンが15〜20万円ほどですが、Antminerの中には3万円程度で買えるものもあります。

ASIC搭載マシンの懸念点

ASICは今やマイニングに欠かせない回路となっていますが、実際のところ私たち一般人が使用していくには少し難があります。その理由として以下が挙げられます。

  • 電力消費量が大きい・音がうるさい
  • 手に入るのは旧型の古いマシンのみ

ASICは膨大な計算量を必要とするPoW向けに開発された回路であるために、優れたパワーを持っている反面、電力消費量が非常に大きいのが特徴です。

電力消費量が大きいことは、温暖化といった環境への悪影響が懸念されているほか、個人使用においても発熱や爆音に悩まされる可能性があります。

また、一般向けに販売されているASIC搭載マシンは旧型で、新型は販売する企業や他のマイニング企業に渡っています。新型の方が高性能なので、同じASIC搭載マシンであっても、私たち一般人が購入できる旧型では新型に太刀打ちできません。

CPUやGPUなどでマイニングしている人には勝てますが、現状では企業が大規模にマイニングしているので、ビットコインなどディフィカルティが高い通貨においては、たとえ一般向けのASIC搭載マシンを使用しても高い収益性は望めません。

ASIC搭載マシンを使用したマイニングの今後

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2017年以前には、私たち一般人でもマイニングで大きな利益を得ることが出来ていました。しかし2018年の大暴騰を契機に、多くの企業が仮想通貨市場の成長を見越してマイニング業界に参入したことで、ディフィカルティが急激に上昇し、マイニングで大きな利益が望めなくなりました。

また、ビットコインの厚いサポートラインであった60万円付近を下回ったことで、採算がとれなくなって多くの企業がマイニング業界からの撤退を余儀なくされました。

このような激動の状況で、今後私たち一般人がマイニングで大きな収益を得られるチャンスはあるのでしょうか。

多くの企業が撤退を余儀なくされている

時価総額1位のビットコインは、仮想通貨市場を牽引する存在なので、他のほとんどの通貨がビットコインの値動きに影響されます。そして仮想通貨市場が成長するにしたがって、基本的にはマイニング報酬が高くなります。

このことから、マイニングで採算がとれるのはビットコインにおいて最低60万円程度と言われていました。この60万円台のラインは強く意識され、何度も反発する強烈なサポートラインとなっていたのです。

しかし、2018年11月18日頃にサポートラインが割れて急落。およそ1か月で30万円台まで下がったことで採算がとれず、多くの企業がマイニング業界からの撤退を余儀なくされました。

12月11日に仮想通貨取引所のBitmexが発表したレポートによると、この暴落を受けて、ビットコインのハッシュパワーは31%近く減少。31%もの減少率は、Bitmain社のASIC搭載マシンAntminer S9の約130万台分に相当するとしています。

一般人がASICマイニングで収益を得るチャンスはあるのか

結論から言うと、個人的には今後チャンスはあると感じています。その理由は2つ。

1つ目は多くの企業がマイニング業界から撤退したことです。企業の撤退を受けてディフィカルティが低下したので、マイニング報酬の獲得率は上昇しています。

そして2つ目は仮想通貨市場が今後成長を遂げると思っているからです。60万円台のサポートラインが割れて、2018年末時点では30万円台にいますが、さらに下回る可能性も十分考えられます。下落するとすれば、2017年7月あたりのサポートラインである20万円あたりまではいくでしょう。

しかし、個人的にはそれよりも下回ることなく、今後大きく伸びていくと予想しています。おそらく急騰という感じではなく、数年かけてゆっくりと最高値である220万円を目指すでしょう。

一度マイニング業界から撤退した企業が再び参入するのは難しいもの。そのためディフィカルティはそれほど上がらず、それでいて仮想通貨市場が成長することで、短期的かもしれませんが、今後私たち一個人でもASIC搭載マシンを使用したPoWマイニングで大きな収益が得られる時が来るはずです。

まとめ

仮想通貨のマイニングは、CPUから始まって、GPU、FPGA、そしてASICへと進化を遂げ、現在では最も優れた採掘効率を誇るのがASICです。

ASIC搭載マシンの購入は基本的に海外サイト上で行う必要があるほか、発熱や爆音、接続・設定がやや難しいなど、初心者の方にはハードルが高いですが、収益性を追求するならASICは外せません。

現在PoWマイニングは競合率が非常に高く、収益性は期待できませんが、今後は分かりません。多くの企業が撤退していますし、仮想通貨市場が成長すれば、一個人でも付け入る隙はあるはずです。

今後、仮想通貨市場が成長すると予想している方で、マイニングに興味があるなら、ASIC搭載マシンを購入して本格的にマイニングしてみてはいかがでしょうか。併せて現物取引をしておくのも良いでしょう。

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