長期優良住宅を建てるべき?税金面でのメリットがある一方、気になる点も

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せっかく家を建てるなら、長く安心して住める家を建てたいと考える人は多いことでしょう。そんな方にとっておすすめなのが「長期優良住宅」の認定を受けることです。

長期優良住宅の認定を受けるためには、耐震性や耐久性、省エネ性などの様々な条件をクリアする必要がありますが、条件をクリアするということは「安心して住める家」の証明でもあります。また、税金面で様々な優遇を受けられるというメリットもあります。

とはいえ、時間やコスト、手間がかかるというデメリットも存在するので、メリットやデメリットをしっかりと考慮し、計画的に建てることが大切です。

ここでは、まず長期優良住宅とはどのようなものなのかを説明した上で、メリットやデメリットについて詳しく解説していきます。

長期優良住宅とは

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長期優良住宅は、簡単に言うと「環境に配慮しながら安心して長く住める家」のことです。「長期優良住宅認定制度」という制度が2009年にスタートし、この制度の基準を満たした家が長期優良住宅として認められるのです。

認定基準には、耐震性、耐久性、省エネルギー性、可変性、バリアフリー性、維持管理・更新の容易性など、実に様々なものがありますが、いずれも安心して長く暮らすために必要不可欠な要素となっています。

耐震性

極めて稀に発生する地震に対して、継続利用のための改修の容易性を図るために、損傷レベルの低減を図ること

耐久性(劣化対策)

数世代にわたって住宅の構造躯体が使用できること

省エネルギー性

必要な断熱性能などの省エネルギー性能が確保されていること

可変性

居住者のライフスタイルの変化などに応じて、間取りの変更が可能な措置が講じられていること

バリアフリー性

将来のバリアフリー改修に対応できるように、共用廊下などに必要なスペースが確保されていること

維持管理・更新の容易性

構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理を容易に行うための必要な措置が講じられていること

住戸面積

良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること

居住環境

良好な景観の形成、その他の地域における居住環境の維持および向上に配慮されたものであること

維持保全計画

建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修などに関する計画を策定されていること

長期優良住宅のメリット(税制優遇)

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長期優良住宅の認定を受ける大きなメリットが「税金面で優遇される」ということ。

家を所有すると不動取得税や登録免許税、固定資産税などを支払う義務が発生しますが、長期優良住宅ではこのような税金が軽減されます。

また、所得税における住宅ローンの控除額が引き上げられるほか、長期優良住宅にかかった費用の一部が所得税額から控除されるなど、様々な税制優遇を受けることができるのです。

不動産取得税の軽減

不動産取得税とは、土地や住宅を購入したり、住宅を建築するなどした際に発生する税金です。

登記とは関係なくかかってくるもので、一般的な住宅の場合には1,200万円までが控除対象となりますが、長期優良住宅の場合には1,300万円にまで引き上げられます。

不動産取得税の税率は3%なので、控除額が100万円高い長期優良住宅なら、一般的な住宅と比べると最大3万円(100万円×3%)の節税となるのです。

しかし、減額が効力を発揮するのは住宅の評価額が1,200万円を超えた場合のみです。長期優良住宅であっても小規模住宅の場合、減額措置を受けられない場合もあります。

登録免許税の軽減

住宅を登記した際にかかるのが登録免許税です。一般的な住宅なら評価額の0.15%の税金がかかってきますが、長期優良住宅なら0.1%に軽減されます。

たとえば建物の評価額が3,000万円である場合、一般住宅なら4,5万円になるところ、長期優良住宅なら3万円となります。

また、住宅の所有権を移転する登記においても減額されます。通常は2.0%で、一般住宅でも0.3%に軽減されますが、長期優良住宅では0.2%(マンションは0.1%)です。

建物評価額が3,000万円の場合、一般住宅なら9万円になるところ、長期優良住宅なら6万円(マンションは3万円)しかかかりません。

固定資産税の軽減

固定資産税とは、土地や住宅などの資産を所有している場合に、その資産に対して毎年かかる税金のことです。

床面積が50〜280㎡の場合、一般の戸建て住宅なら3年間、一般のマンションなら5年間、2分の1に減額される措置があります。その一方で、長期住宅なら一戸建てで5年間、マンションで7年間に延長されます。

固定資産税の税率は1.4%です。評価額が3,000万円の戸建の場合には、年間42万円(減額時は21万円/年)の税金がかかってきますが、減額機関が2年間延長されるので、長期優良住宅は一般住宅と比べて42万円の節約ができる計算になります。

住宅ローン控除

住宅の床面積が50㎡以上、床面積の2分の1以上が居住用であることなどのいくつかの条件を満たし、10年以上の住宅ローンを組んだ場合に、確定申告によって受けられる所得税の控除のことです。

一般住宅だと借入限度額が4,000万円となりますが、長期優良住宅だと5,000万円まで引き上げられます。控除率は1%で、10年適用されるので、最大で100万円ほどの差が生まれます。

投資型減税

一般住宅の場合、所得税の控除を受けるためには住宅ローンを利用する必要がありますが、長期優良住宅の場合は住宅ローンを利用しなくても控除されます。

これが投資型減税で、住宅の性能強化にかかった費用の10%(上限65万円)を所得税額から控除することができます。

ただし、上で挙げた住宅ローン控除との併用はできません。ローンを組んでいない場合に利用できます。

住宅ローンの金利の引き下げ

住宅ローンにおける優遇措置は、所得税の控除だけではありません。住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して貸し出す「フラット35」において、金利の引き下げが適用されます。

長期優良住宅ならフラット35の金利Aプランが適用になって、10年間の金利が0.25%となります。また、返済期間が最長で50年となる「フラット50」も利用可能になります。

地震保険料の割引

地震保険とは、地震によって住宅が損害を受けた場合に補償される保険です。住宅の耐震性など、いくつかの条件による割引制度が設けられています。

長期優良住宅でなくても条件を満たしていれば割引を受けることができますが、長期優良住宅に認定される条件に耐震性など割引制度の条件と重なる事項があるので、長期優良住宅だと必然的に割引が受けられるようになります。

長期優良住宅のデメリット

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このように、長期優良住宅に認定されることで、税金面で様々な優遇を受けることができます。しかし、メリットだけではなく、いくつかデメリットも存在します。

デメリットを大まかに言うと、申請・建築に時間がかかる、申請・建築にコストがかかる、建築後に手間がかかることです。

申請・建築に時間がかかる

住宅の性能を高めるためには、それ相応の時間がかかるものです。また、認定を受けるために申請をする必要がありますが、申請には提出種類の準備や所管行政庁への手続き、審査などがあるので、申請にも時間がかかってしまいます。

通常住宅よりも1か月程度の追加期間がかかると考えておきましょう。ただし、長期優良住宅のノウハウや経験を持つ業者であれば、よりスムーズに進めてくれるはずです。依頼時に実績の有無を確認しておくのがよいでしょう。

申請・建築にコストがかかる

長期優良住宅の基準に合わせて性能を高める設計にすると、当然ですが、それなりにコストがかかります。

また、申請時においてはご自身で手続きを行うと5〜6万円くらいで済みますが、業者に代行してもらうと倍以上のコストが必要で、数十万円になる場合もあります。

スムーズに申請するには代行が必須とも言え、ほとんどの方が業者に代行してもらっているので、申請に数十万円の追加コストがかかることを念頭に置いておきましょう。

建築後も手間がかかる

長期優良住宅を建てた後、最低10年ごとに点検をしなければなりません。これは認定基準の「維持保全計画」に該当し、点検を行わないと認定取り消しになる恐れがあります。

また、点検の都度コストがかかってしまいます。建物の状態によってコストは変わってきますが、何もしない住宅よりもコストが高くなるのは明白です。

まとめ

長期優良住宅は、安心して長く住めるという点が大きなメリットと言えますが、それだけなら何も長期優良住宅に認定される必要はなく、相応の機能を備えるだけでも良い話しです。

しかし、長期優良住宅に認定されることで、税金面やローン金利などにおいて様々な恩恵を受けることができるのです。

その一方でコストや時間、手間がかかるというデメリットも存在しますが、長期優良住宅の認定制度が誕生してからまだ10年しか経っておらず、今後は長期優良住宅が中古市場における流通量が増えることが想定されるので、この点も考慮すると、長期優良住宅に認定されるメリットは多大と言えるでしょう。

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