哲学書の入門としておすすめしたい本ベスト10!考えるきっかけは書物から

「哲学」と聞くと多くの人は、その堅苦しい響きに何となく近寄りがたいイメージを持たれるのではないでしょうか。

しかし哲学は基本的に「何かを考えるためのきっかけ」であり、例え専門知識や高度な思考技術がなくても問題なく哲学の本を読むことはできるのです。

そのため今回は真剣に何かを考えるために使えるおすすめの哲学書を10冊、厳選してご紹介したいと思います。

哲学への入門として最適な本を集めましたので、何かを考えるための土壌をこころのなかに築いてみましょう。

哲学書のおすすめ10選!

哲学書のおすすめ10選

14歳からの哲学 考えるための教科書

14歳からの哲学 考えるための教科書

哲学への入門編としてまず最初におすすめしたいのが、「14歳からの哲学 考えるための教科書」です。

タイトル通り14歳という年齢を生きる子供たちに向けた哲学書であり、さまざまなテーマを使って考えることの大切さを提示しています。

柔らかな語り口で哲学について一緒に考えるスタンスとなっているので、思春期のこころに大きな影響を与えてくれるでしょう。

しかしこちらの本は、決して子供のためだけに設計された本ではありません。

緩やかで優しい文体が使われているため気づきにくいですが、そこに書かれていることは非常に論理的で、真剣に考えなければ答えを探せないようなものばかりです。

「大人だから」という言い訳は不要で、哲学に興味があるのなら「大人でも」間違いなくチェックしておきたい本として覚えておきましょう。

ただ考えるのではなく、「哲学として考える」方法が学べるので、長い時間をかけて何回も読み返すことがおすすめです。

14歳からの哲学 考えるための教科書

14歳からの哲学 考えるための教科書

君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか

世界中からいつまでも読み続けられる名作哲学書を選ぶとしたら、日本代表は「君たちはどう生きるか」になるのではないでしょうか。

主人公である少年「コペル君」を中心に、日常で巻き起こるさまざまな問題について考える物語がベースとなっているので、内容としては小説に近いものとなっています。

コペル君の考えや行動を、叔父さんが書いたノートを通して読み解いていくことで、着実に思考の実績を積み重ねていくことができる名著です。

小説のようにストーリー重視の構成のおかげで哲学書としては非常に読みやすく、誰にとってもとっつきやすい本となるでしょう。

ひとりの人間の頭の中を覗くような哲学書とは違い、この本は外部からの影響によってどんどん変化していく考え方や苦悩を主軸にしているのが特徴。

生きていく上で多くの人が感じなくてはいけないことを疑似体験させながら、叔父さんノートと共にじっくりと考えていく経験は、哲学に触れる最初の一歩としてピッタリです。

どのような道筋を通って考えるべきなのか、もしくは周囲の人とつながっていけばいいのか、そういった「生」に関する問題が多彩なヒントと一緒に書かれています。

これを読んで、あなたはどう生きるのか。

その答えを将来に見つけるためにも、1度は読破しておくことをおすすめします。

漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか

哲学用語図鑑

哲学用語図鑑

哲学にはさまざまな専門用語が存在しますが、そのすべてを深くまで理解することはとてつもなく難しいです。

しかし理解しやすい形で手元に置いておくことはできるので、哲学を知るのならプレジデント社の「哲学用語図鑑」もチェックしておきましょう。

かわいらしいイラストと図解によって記述される哲学用語の数々は、頭のなかに言葉の明確なイメージを植えつけてくれます。

哲学者の名前から索引可能な点も魅力で、どのような人たちが哲学を支えてきたのかがわかるようになっているのです。

それぞれの哲学者がどういった考えを見つけ出し、そして専門用語として残していったのかが簡単にわかるので、この本があるだけでその後の読書が大きく変わってくるでしょう。

基本的な哲学史の流れを知ることもできるため、単純に読み物としても面白い本です。

もちろん必要なタイミングで求める言葉を検索できるので、他の哲学書と合わせて持っておくとより内容の理解度を深めることができますよ。

「哲学用語図鑑」では主に西洋哲学が、「続・哲学用語図鑑」では日本・中国・英米哲学が扱われているため、できるなら2冊とも本棚に加えておきたいですね。

哲学用語図鑑

哲学用語図鑑

方法序説

方法序説 (岩波文庫)

いわゆる哲学書らしい本に触れてその雰囲気に慣れておくことも、哲学を考える過程において大切なことです。

個人的にデカルトの「方法序説」は、かなり把握しやすいルートから思索の旅を手助けしてくれる案内本として、多くの人におすすめできると思っています。

「我思う、ゆえに我あり」という言葉が有名なデカルトですが、その思考のプロセスがシンプルに書き出されているので、偉大な哲学者の出発点を知ることができるでしょう。

もちろんすべてを読み解くのは難しく、最初の頃はひとつの文章を頭に入れるのにも苦労するかもしれません。

それでも方法序説から受け取れるものはあまりにも大きいので、長い時間をかけても読み進めていくことがおすすめです。

こちらの本は各テーマによって6つの章に別れているため、特に興味がない、なかなかストンとこころに落ちてこないという部分は後回しにするのもあり。

今の自分にとって大切になるような言葉や思考を優先して拾い上げて、ぜひ哲学的に考えるきっかけとして利用してみましょう。

方法序説 (岩波文庫)

方法序説 (岩波文庫)

ソクラテスの弁明

ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫)

哲学では考えるだけでなく、それを自分の頭の外側に放出していくことも大切な行為となります。

そういった意味では古典「ソクラテスの弁明」も、哲学に入るための教科書となり得るのではないでしょうか。

本書は法廷で多くの疑念や悪意、そして常識に対して弁論を行う哲学者ソクラテスの姿を書いた記録です。

力強くて論理的、そしてわずかな隙間を縫うように慎重に通された思索は、哲学者の生き様を見るようで単純に面白く読むことができるでしょう。

ソクラテスの考えや弁明方法だけでも勉強になりますが、哲学における議論の重要性を感じられるのもこちらの本の特徴。

考えたことを言葉にすることの大切さもまた、哲学書から学べるスキルとなるのです。

岩波文庫版には友人クリトンとの対話を書いた「クリトン」が、光文社古典新訳文庫版には内容を理解しやすくなるような構成がプラスされているので、両方のバージョンを持っておくのもおすすめできます。

ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫)

ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫)

反哲学史

反哲学史 (講談社学術文庫)

つまるところ哲学とは何か、哲学はどうやってみるべき学問なのか、そういったことを追及した「反哲学史」も非常に面白い読み物です。

哲学を崇めるのを止めて、新しい立場から哲学の歴史を紐解いていくのがこの本の主な趣旨となっています。

これまでの哲学史を振り返りつつ、西洋哲学をむやみやたらと絶対視しないスタンスは、今後さらに広く哲学の世界を学んでいく上で大事な感覚を育てることになるでしょう。

哲学史入門としてもストレートにおすすめできる内容となっているため、哲学についての知識が少ないままでも大丈夫。

楽しみながら哲学の成り立ちを、ひとつずつ吸収していけるでしょう。

それぞれの哲学者の生涯にスポットが当てられているのも特徴で、その思想のバックボーンを探ることもできます。

ソクラテスから現代哲学の転換期であるニーチェまでの歴史を、まずはこの1冊で確認してみるのもおすすめです。

反哲学史 (講談社学術文庫)

反哲学史 (講談社学術文庫)

史上最強の哲学入門

史上最強の哲学入門 (河出文庫)

哲学はその難解さゆえに、初心者のために簡略化してまとめられた本もたくさん出版されています。

経験上そういった本はイマイチ読書のためにならないことが多かったのですが、「史上最強の哲学入門」は、入門としておすすめできる内容を持つ哲学書だといえるでしょう。

哲学者の思想を「得意技」として紹介し、それぞれの解説を勢いよく進めていく展開は読みやすくて好感が持てます。

ユーモラスな表現も多々あるので、書籍のペースに合わせて楽しく読み進めることができるでしょう。

哲学がどのような経路を通って今に至ったのか、どのような考えが生み出され、否定され、それを踏み台に新しい思考が生まれてきたのか。

そういった基本的な歴史を知るには、うってつけの構成になっている本となるのです。

とにかくわかりやすい本であるため、これを下地に哲学の深い部分を勉強していくのもおすすめされます。

史上最強の哲学入門 (河出文庫)

史上最強の哲学入門 (河出文庫)

読書について

読書について (光文社古典新訳文庫)

考えることの難しさや、考えているつもりになっている人の愚かさを辛辣に書き出したショーペンハウアーの「読書について」も、哲学書として読んだ人に大きな影響を与えることでしょう。

本を読んでいる=何かを考えている、ということにはならないとする作者の主張には、本当に耳が痛くなります。

時代に対する攻撃的な意見は現代のすべてに当てはまるとはいえないかもしれませんが、それでも多くの人のこころに考えることの難しさを伝えてくれるでしょう。

文学や読書に対する評論のなかに、そこにしかない哲学を見出すような本作は、早めに読んでおくに越したことはない名著だといえます。

これを読んだ後改めて自分の読書体験を振り返ってみると、果たして本当に自分の考えを持ちながらページをめくることができていたのか……と不安になります。

きっとできていないのだろうなあと考えてしまいますが、「読書について」はそれでもまた読書をしてみようと思わせる、強い意志を与えてくれる本だといえるでしょう。

読書について (光文社古典新訳文庫)

読書について (光文社古典新訳文庫)

嘔吐

嘔吐 新訳

近代哲学を学んでいけば必ず通ることになるジャン・ポール・サルトルの実存主義、その基礎であると同時にあらゆる哲学的思索を含んだ名著「嘔吐」は、ぜひ読んでおきたい哲学書となります。

主人公が感じるあらゆる存在に対する嫌悪感、それが嘔吐という現実的な苦しみにつながったとき、人間は何を発見すればいいのか。

哲学ということを意識させずに哲学的な思考の流れのなかに導いてくれる書籍であるため、嘔吐を読むことがそのまま哲学の源流に触れることになるかもしれません。

そもそもこちらの本は小説としての完成度が素晴らしいので、まずはストーリーをしっかりと読み進めてみることがおすすめです。

新訳版が出たこともあり、今だからこそ読んでおきたい哲学書だといえるでしょう。

文学的な要素に比重がかかっている分、読みやすくて親しみやすい本となっています。

厭世的なようでどこまでも人間味に縋りついた嘔吐は、哲学の教科書としてだけでなく、個々人の人生のバイブルとしてこれからも読まれていくのではないでしょうか。

嘔吐 新訳

嘔吐 新訳

100の思考実験

100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか

読んで考えるのではなく、考えるために読むことを実践するための本「100の思考実験」は、特殊な形式でありながら魅力的な哲学書として分類されるでしょう。

こちらの本にはさまざまな設定を使った問いが100個記載されていて、読者がそれぞれの設問に対して思考し、そして答えを出すという内容になっています。

必ずしも正解がある問題ではないため、なぜその答えに至ったのか、どうしてそう考えることができたのかを知ることで、自分なりの思考法を鍛えることができるでしょう。

トロッコ問題のような有名どころがたくさんある一方、SF的な設定のなかで考える問題も多いので、飽きずに多くの思考を楽しむことができます。

「絶対にこうだ!」と確定される答えはないため、ときには同じ問題を別角度から考えてみれば、長くこの書籍を読みこむことも可能です。

難解な哲学書を読み疲れたときには、頭の体操をするつもりで自由な思考を解放してみることをおすすめします。

頭から順に読んでもOK、適当なページを開いてみてもOK、とにかく気になった問いを見つけて思考のきっかけをつかんでみましょう。

100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか

100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか

哲学書を読むときのポイント

いきなり読まない方がいい本もある

哲学はその歴史のなかで、さまざまな本を意味ある形で残してきました。

それらは今や幅広いジャンルにまで及び、多くの読者を獲得するに至っています。

その豊富さゆえに哲学書としてスタンダードな本はある程度決められていて、特別に探さなくても登竜門的な本にはいくつも出会うことになるでしょう。

しかしそういったスタンダードな哲学書のなかには入門の段階で読むには適さない本も多く、挫折の要因になることもあるのです。

例えばニーチェの「ツァラトゥストラ」、カントの「純粋理性批判」、ハイデガーの「存在と時間」、西田幾多郎の「善の研究」などは、有名ですがその内容に相当するだけの難解さを有しています。

いきなりこれらの本に挑戦しても、おそらくは哲学の面白さを知ることにはつながらないでしょう。

哲学の神髄を知るためにはある程度の助走が必要となるため、まずは哲学の歴史や考え方を学べるような本から手に取ることがおすすめです。

読み切ることにはこだわらない

哲学書全般に言えることだと思いますが、書かれている内容を1から10まで理解するのは本当に難しいです。

それは例え初心者のために構成された本であっても変わらないので、すべてを把握しようと意気込むことは逆に哲学への学びの妨げになるかもしれません。

むしろ哲学書を手にしたときは読み切ることにこだわらず、好きなタイミングでどんどん中断することをおすすめします。

無理をして最後まで読むことを頑張るよりも、たまたま読んだ部分から思考のきっかけを見つける方が、哲学書から意味ある内容を引き出せるでしょう。

嫌々読んだところで得られるものは少なく、貴重な時間を無駄にすることにもなります。

それならいっそ読書を諦めて、興味を持てる別の本にシフトしていった方が有意義でしょう。

哲学書は途中から読み始めても面白いものが多いため、いずれまた読みたいと思えたときに再開する形でも十分に読書を楽しむことができますよ。

まとめ

哲学書はじっくりと時間をかけて読み進めれば、たくさんのメリットを得られる良書ばかりとなっています。

この機に読めそうな本を選別して、哲学の世界に入門してみてはいかがでしょうか。

読むうちに少しずつ哲学書独特の感覚がつかめてくるはずなので、経験を積んでいけばよりたくさんの本を楽しめるようにもなります。

興味を持てたこのタイミングを利用して、ぜひ哲学書の読書を始めてみましょう。

この記事を書いた人

syunkin999