恩田陸のおすすめ小説7選!引きずり込まれるような面白さをこの機に!

直木賞作家恩田陸のおすすめ小説7選
「蜜蜂と遠雷」が直木賞を受賞した2017年以降、「恩田陸」の勢いは最高潮に達していると感じられます。

私の周りでも「読んでみたい!」という声が多数あり、ここ最近も何冊かおすすめを紹介してきました。

そのたびに作品の面白さに引きずり込まれてしまい、この1年ちょっとで何度読み返すことになったかわかりません。

そこで今回改めて気づいたその魅力を通して、恩田陸のおすすめ小説を7つにしぼってご紹介したいと思います。

じっくりと読み込める小説を探しているのなら、以下から恩田陸をチェックしてみてください。

気持ちを持っていかれるような作品が多いので、他に集中すべきことがあるときは注意しておいた方がいいかもしれません。

恩田陸のおすすめ小説7選!

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

先にも紹介した「蜜蜂と遠雷」は、恩田陸を語るうえでなくてはならない小説となりました。

作者の筆圧が感じられるようなとんでもない文章表現が魅力である本作は、直木賞を取った取らないに関係なく恩田陸の代表作となることでしょう。

「音を文字で書く」という突拍子もないような試みを、まるで当たり前のように成功させているのがすごいところ。

音楽がわからないとつまらないのでは?と迷われる方もいますが、私もふくめてライトな音楽にしか触れてきていない人のこころもばっちりつかんでくれます。

むしろ余計な先入観がない状態で読む方が、自由な感覚で蜜蜂と遠雷の文章を楽しめるのではないでしょうか。

音楽を題材にした小説は近年ちらほら発表されていて、それぞれの作者が文字で音の世界を書くことに挑戦しています。

しかし蜜蜂と遠雷ほど、音を発しているシーンを想像できる小説はないかもしれません。

文字による圧倒的な音の迫力は、もう1度音楽の魅力を認識するきっかけにもなるでしょう。

蜜蜂と遠雷はコンピレーションCDも出しているので、作中で演奏されている音楽をまとめてチェックしてみるのもおすすめです。

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

夜のピクニック

夜のピクニック (新潮文庫)

思春期に読んで面白かった小説は、大人になってからでも面白い。

そんなことを思わせてくれたのが、「夜のピクニック」です。

夜の世界を歩き続ける高校生たちの物語を描く本作は、その舞台設定から既に圧倒されてしまいます。

青春小説とひとくくりにしてしまうことがもったいないほど、さまざまな問題や課題、そして人生が描かれている名作です。

ミステリー的な要素を少しずつ明かしていくページに合わせて、ゆっくりと結末がやってくるような展開が印象的。

「最近徹夜なんてしなくなったな」という人には、ちょっとしたノスタルジーも与えてくれるかもしれません。

個人的にこの小説はある種のファンタジーに分類されると思うのですが、読んだ人はどう感じられるでしょうか。

リアルではないというわけではなく、むしろ現実的な問題を描いている小説ですが、「夜のなかを高校生たちが歩く」という状況が特別に幻想的な世界観を作り上げているように思えるのです。

幻想と現実がかっちりとかみ合った結果に生まれた絶妙なラインを指でなぞっているような、そんな不思議な感覚が小説をより一層楽しませてくれるかもしれません。

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

六番目の小夜子

六番目の小夜子 (新潮文庫)

恩田陸のデビュー作である「六番目の小夜子」も、読めばその作者の力量がはっきりと見て取れる傑作となっています。

ホラー&ミステリーという読者を選ぶようなジャンルでありながら、青春小説としても成立しているのが見どころです。

あらゆる面白さが盛り込まれているなかで、物語がどのような方向に向かっていくのか、文章のスピード感と共にぜひ体験してみてほしいですね。

学校にまつわる伝統を軸に、今を生きている生徒たちを書くのが恩田陸の得意技ともいえますが、この六番目の小夜子では特にその良さがはっきりと出ています。

ちょっとダークな小説の方が好みだという人は、まずこちらの作品を手に取ってみてはいかがでしょうか。

決して「怖くて眠れなくなる!」ほどホラーが強いわけではなく、いい感じに柔らかな青春と交わっているので、気持ちよいストーリーを体験できることかと思います。

六番目の小夜子 (新潮文庫)

六番目の小夜子 (新潮文庫)

麦の海に沈む果実

麦の海に沈む果実 (講談社文庫)

素晴らしく不思議で不気味な世界観が印象的な「麦の海に沈む果実」は、恩田陸にハマるきっかけとして最適の小説かもしれません。

なぜホラーミステリーが主体であるのに、こんなにどっぷりと世界に浸れる小説を書けるのか、読めば読むほどその不可思議さに魅了されていくことになるでしょう。

1つの不安という風船を膨らませて、いつ爆発するのかハラハラさせるようなストーリーが展開されていくので、常に傍らに面白さを持ったまま読み進められます。

読み終えるころには小説の世界に愛着を感じられるほど、没頭できる作品になるかもしれませんよ。

青春学園ものとして考えてもその完成度は高く、ホラーを加えたことによる刺激的な物語を楽しむことができます。

ストーリーを牽引するキャラクターたちの感じ方も面白いので、それぞれの言動をこまめに観察してみるのもおすすめです。

麦の海に沈む果実 (講談社文庫)

麦の海に沈む果実 (講談社文庫)

蒲公英草紙 常野物語

蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)

個人的な感覚でのおすすめですが、「蒲公英草紙 常野物語」を早めに読むのも、恩田陸を深く知るポイントになるのではないでしょうか。

蒲公英草紙 常野物語は前作に当たる「光の帝国ー常野物語」を読んでから手を付けるのが一般的な流れかもしれませんが、私がそうであったようにこちらの長編小説から読んでもまったく問題はありません。

むしろノスタルジックな恩田陸作品にこころ打たれた経験がある人は、蒲公英草紙 常野物語を優先して読んだ方がより面白い読書が行えると思えるのです。

不思議な能力を持った人々の世界にそっと触れるような物語は、ワクワクと共に切なさもまた連れてきてくれます。

すごく考えさせられるような内容となっているので、ぜひ深くまで読みこんでみることがおすすめです。

恩田陸が描こうとしているダークでファンタジックな世界は、学校や集落のような閉ざされた空間でこそ活かされることがわかる作品でもあります。

一種の閉塞感や陰鬱な空気が恩田陸の物語に不可欠であることが、蒲公英草紙からは読み取れることでしょう。

ちなみにもっとSFや幻想的な要素が多い作品が良いのなら、蒲公英草紙の前に光の帝国ー常野物語を読むのも当然アリです。

光の帝国は短編集なので、1つずつ別の視点や感じ方を楽しめるのがメリットとなっています。

どちらも常野一族という存在にのめり込むための魅力的な書籍となっているため、できるなら2冊ともチェックしてみてください。

蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)

蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)

ドミノ

ドミノ (角川文庫)

なぜ「ドミノ」というタイトルなのか、それは最後まで読めばわかります。

倒れ込むように前へ前へ進んでいく内容はとにかく痛快で、小説ならではのエンタメを形成しているといえるでしょう。

点として置かれた人々や出来事が線でつながっていくこの面白さは、実際に読んでみないと伝わらないのが特徴です。

かなりさらっと読み進められるので、ぜひまとまった時間を利用して一気に読破してみることをおすすめします。

恩田陸の新たな一面を見ることができる一方で、作者らしい緻密なプロットの存在を感じさせてくれる作品です。

スピード感で押し切るだけではない点が実力を思わせる構成となっているため、読書に慣れている人でも楽しめることでしょう。

ある種物語を自由にできる作家ならではの遊びが実行されている作品なので、まずはとにかく何も考えずに小説だからこそ可能なご都合主義を味わってみてください。

ドミノ (角川文庫)

ドミノ (角川文庫)

図書室の海

図書室の海 (新潮文庫)

これまでの小説を補完するような作品が多数ふくまれている「図書室の海」は、恩田陸を知るうえで欠かせないものとなっていくでしょう。

恩田陸は基本的に物語の深部を明かすスタイルの小説家ですが、ときには「もっと何かがあったのでは?」と思わせることもあります。

図書室の海はそういった点を別の物語で補足してくれるので、よりその作品に入りこむきっかけとなってくれるのです。

本編を読んでからこちらの短編を読み、また改めて本編を見返すといった流れを試してみれば、さらに恩田陸の深みにハマっていくことができるでしょう。

何かのテーマに則って1冊の本が組み上げられているわけではないのに、短編集としての完成度は高いです。

読み込めば作者の根底にある「何か」を見つけられるかもしれないので、ぜひ1つ1つの物語をチェックしてみてください。

図書室の海 (新潮文庫)

図書室の海 (新潮文庫)

恩田陸の小説はここがすごい

ページを開けばスイスイ読める

恩田陸の小説は、基本的にかなり読みやすいものが多いかと思います。

気まぐれにページを開いたとしても、スイスイと読み進めることができるでしょう。

お話の軸が「青春」という1つの時期に関係しているせいなのか、誰でもすっと感情移入しやすくなっています。

そのためファンタジーやホラー的な要素が豊富であっても、感覚としては現実の延長として読むことができるのです。

現実感を保っていると難しく考えなくても自然なままで内容を理解しやすくなるので、読書を始めたばかりの人にもおすすめできるでしょう。

またミステリーを構成する謎が散りばめられているのも特徴となっていて、読者にとっての目標をあらかじめ設定してくれているのも魅力ですね。

何を気にしながら小説を読めばいいのかが一目瞭然であるため、最後までストーリーに集中させてくれることでしょう。

小説だから可能なフィクションの力

恩田陸の小説には、超常現象や非リアル的な要素が多分に含まれています。

それらはもちろんフィクションなのですが、物語をまったくチープにすることなく、むしろよりリアルさをつけ加える要因となっているように感じられるのです。

本来はあり得ない設定が読者を誘導する役割を果たしているのか、読めば読むほどフィクションの存在が現実味を与えてくれます。

その結果生み出されているのが、恩田陸という作家なのかもしれません。

こういったメリットは随所に心情描写を入れやすい小説だからこその説得力だと思うので、本を好きになるきっかけにもなるのではないでしょうか。

「小説って何が楽しいの?」と感じたことがある人こそ、恩田陸の作品を読んでみてほしいですね。

青春小説の持つ可能性

若者を題材としたいわゆる「青春小説」は、1つのジャンルとして既に確立されているようです。

書きやすいのかその数は増えるばかりで、本屋に行けば毎月のように新しいものを見かける気がしますね。

しかし青春という1つの枠組みに収められた小説の多くは、似たような形に落ち着いてしまうことが多いように思えます。

それでも恩田陸の小説は、青春小説の枠を逸脱するほどに広がっていくことが当たり前となっていて、いつだって読者を飽きさせることがありません。

青春小説の可能性を示すようなそのクオリティこそ、恩田陸最大の魅力だといえるでしょう。

この機に青春を舞台にした物語が好きな人は、恩田陸の本を1つ読み進めてみることがおすすめされます。

「よくある青春」に終わらせない物語の構築が、きっと読書を楽しませてくれるでしょう。

私のようにキラキラとした青春がちょっと苦手という人ほど、恩田陸はぐっとくると思いますよ。

恩田陸を楽しめた人へのおすすめ作家

村田沙耶香

芥川賞を受賞した「コンビニ人間」で一躍有名作家となった「村田沙耶香」は、恩田陸と合わせてチェックしておきたい小説家ですね。

舞台装置を利用して人間の内面を描く手法が秀逸で、読んでいてハッとさせられることがたくさんあります。

こちらも本来はあり得ない設定から現実味を生み出すことが得意な作家であるため、恩田陸を楽しめたのならぜひおすすめです。

やや攻撃的な内容もありますが、その構成にはきちんと意味があり、それを経由したからこそ描ける小説の世界があることがわかります。

たまにある無駄にグロくて不快な小説とは違うので、ページの奥にある本質を読み取ってみましょう。

ホラーやファンタジーではなくSF色の強い作品が好きだという人は、村田沙耶香の方が特別面白く感じられるかもしれませんよ。

筒井康隆

国内SFの大作家「筒井康隆」先生の作品も、恩田陸の読者にハマる要素が多いかと思います。

超能力やファンタジーをスタート地点に置き、「さて、ここからどうなるのか」と自由に冒険をさせるような小説が豊富で、そこで生まれる数々のアイデアにはおどろかされることになるでしょう。

実験的な小説もたくさんあり、作者の「書くこと」に対する意欲が感じられます。

多少癖の強さはありますが、日本のファンタジーやSFに興味があるのなら「旅のラゴス」や「パプリカ」あたりからチェックしてみることがおすすめです。

万城目 学

森見登美彦と迷いましたが、恩田陸に寄せていくのであれば「万城目 学」がおすすめですかね。

ファンタジーとしてゆるめに構成された内容は、読書中の読み応えと読後の清々しさを兼ね備えた小説を作り出しています。

ライトな感覚で楽しみながら読める本が多いため、気楽に何か1冊手に取ってみてはいかがでしょうか。

青春小説としての一面も強く、物語のなかを奔走するキャラクターたちには親しみさえ感じられます。

恩田陸とはまた違った方向から青春を書いているので、ぜひ機会を見つけてチェックしてみてください。

まとめ

恩田陸の小説の面白さは、既に保証されているといっても過言ではありません。

この機に何冊かの本を読んで、その理由に納得してみてはいかがでしょうか。

私も恩田陸は学生時代に読み始めましたが、今でも安心して読むことができる作家の1人として変わりありません。

1度物語に引きずり込まれれば、その魅力に長いこと虜にされる可能性もあるでしょう。

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syunkin
ガジェット、書籍、仮想通貨などを専門に執筆しているフリーライターです。

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