SF小説を読みたい人におすすめの10選!宇宙規模の物語は本のなかに!

SF小説おすすめ10選
SF(science fiction)を題材とした小説の歴史はあまりに長いので、「数が多すぎて何を読んだらいいのかわからない」と感じる人も多いかもしれません。

たしかにSF小説は唯一無二の世界を作れるほどの自由度ゆえに、作品数の多さと一言では説明できない複雑さを併せ持っているので、何の予備知識もないまま読み始めることは飽きの原因になってしまうでしょう。

そこで今回はSFの読み始めに最適なおすすめ小説を10選にしぼり、SF小説デビューのお手伝いをしたいと思います。

SFとして面白さが保証されているものをひとつずつピックアップしながら解説していきますので、気になるものをチェックしてみてください。

SF小説のおすすめ10選!

ジョナサンと宇宙クジラ

ジョナサンと宇宙クジラ (ハヤカワ文庫SF)

私はSF小説を読み始める人に対して、基本的に「ロバート・F・ヤング」の作品を最初におすすめすることにしています。

特に物語の美しさがこころを打つ「ジョナサンと宇宙クジラ」は、SFがなぜ面白いと言われるのかが理解しやすい作品だといえるでしょう。

難解な表現や複雑な世界観は控えめで、その逆のわかりやすくてハートフルな展開が複数の短編によって描かれています。

SFとセットで扱われやすいハードボイルドでバイオレンスな要素がない本作品なら、SFに慣れていなくてもすんなりとその物語に没入することができるでしょう。

とてもロマンチックかつハッとするような感動が待っているので、安心して読めるというメリットがこの本にはあります。

物語同士のつながりもないため、気になるタイトルを直感で好きに読んでみることもおすすめですね。

個人的に読みやすさを重視してジョナサンと宇宙クジラを推しますが、「たんぽぽ娘」や「時をとめた少女」など作者が書く他の短編集でも同じように柔らかいSFを楽しめます。

SFというジャンルを素直に楽しむことを求めるのなら、まずはロバート・F・ヤングを優先して読んでみてください。

ジョナサンと宇宙クジラ (ハヤカワ文庫SF)

ジョナサンと宇宙クジラ (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: ロバート・F ヤング,伊藤典夫,網中いづる,Robert F. Young
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/10/06
  • メディア: 文庫
  • 購入: 8人 クリック: 59回
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幼年期の終わり

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

言わずと知れたSFの古典的名作、ゆえにおすすめしないわけにはいかないのが「幼年期の終わり」です。

人間とは、人類の存在とは、私たちが行くべき進化とは、そういったあらゆる問題について真剣に考察させてくれる傑作となっています。

SFとしての面白さを持ちながら哲学的な内容をも含んだその懐の深さは、何度読み返しても新しい発見をこころに引き起こしてくれるでしょう。

この小説のように突然「終わり」がやってきたとしたら、現在からの転換、もしくは脱却を求められたとしたら。

読んでいると不意に、そんなことを考えてしまいます。

幼年期の終わりに書かれている内容は、そのまま自分自身の「今」に当てはめることもできるのではないでしょうか。

冒頭から最後まで読ませる力がまったく衰えない「アーサー・C・クラーク」の構成力と、それを読みやすい日本語に翻訳した訳者の力が、SFに不慣れな人にも面白さを的確に伝えてくれます。

そしてこの小説はSFというジャンルに対してどのように向き合うべきなのか、どういった「交流」をすべきなのかということについても、言及しているように感じるのです。

大げさでなく人生観が変わるだけの魅力を持った小説だと思うので、SFに興味を持てたのならチェックしておいて間違いはないといえるでしょう。

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

これもまたSFの定番小説、と同時にいくらでも読者がその世界を広げていける複雑性を持った名作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」は、当然おすすめしておきたいです。

アンドロイドという存在が当たり前となり、生身の人間と区別がつかなくなった世界で、人間であることを証明するための物語、とでも要約することができるでしょうか。

アイデンティティを模索するストーリーは緊迫感と迫力に満ち、アンドロイドという存在に対する認識問題も手伝って非常に深読みができる小説となっています。

ロボット技術が少しずつ進化しはじめた現代において、この小説の価値はまた新しいものとして広まっていくことでしょう。

電気羊というヒントを頼りに人間らしさにフォーカスしていく構成はさすが「フィリップ・K・ディック」といえるもので、その圧倒するような文章は遠い未来のワンシーンを予言しているような気さえします。

ただ物語の推移を見守るのではなく、ぜひそこに自分の考えを投入して、人間という本来あるべき概念を見直してみることもおすすめです。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?といえば映画「ブレード・ランナー」の原作としても有名ですが、それらに特別な関連性を求める必要はないと思います。

ただ小説の世界を使って「こういう表現も可能なのか」という驚きはあるので、原作の内容にハマれたときは映画を見てみるのもいいでしょう。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

華氏451度

華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)

SFとしてだけでなく、文学の未来をも考えさせられる「華氏451度」もおすすめの小説です。

本を所有することができなくなった世界において、人々はどのような行動を取るのか。

何も考えずに限られた情報だけを受け取る人生に、本という存在はどれだけ力となり得るのか。

華氏451度は書籍という媒体の存在を禁止した架空のディストピア小説でありながら、現代社会の一面をごそっと抜き出してきたようなリアルさをも感じさせてくれます。

私たちの所有しているものがいつ社会的な華氏の温度に達してしまうのか、そこまで考えながら読むと小説の書く問題が身近に感じられるでしょう。

個人的には本作のラストがとっても印象深く、それを読みたいがために何度も手に取ってしまいます。

本(もしくは知識)がなくなっていくことの意味とそれに対する人々の抵抗は、SF文学らしい思慮深さにつながっていくでしょう。

華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)

華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)

たったひとつの冴えたやりかた

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)

「たったひとつの冴えたやりかた」というタイトルがその存在を忘れさせないこちらの本も、SFの名作中の名作です。

宇宙や新しい世界へのアプローチが描かれつつ、人類を客観視するようなスタイルが小説内に整えられているので、これぞSFらしいと思えるような感動があります。

いわゆる宇宙人たちから見た人類という構成ですが、人だからこそ成立した物語を読み返すストーリーは、私たち現代の人間ですら驚かされ、そして考えさせられるでしょう。

遠い未来には小説のなかに見られるように、人類が宇宙におけるひとつの歴史として語られる日が来るのかもしれない。

そんな想像をさせてくれる本作は、「ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア」が残した最高の傑作だといえるでしょう。

3つの物語はどれも胸をふるわせるような内容となっているので、じっくりひとつずつ味わってみることをおすすめします。

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)

宇宙消失

宇宙消失 (創元SF文庫)

SF小説をおすすめするのであれば、「グレッグ・イーガン」の名前を出さないわけにはいかないとは思うのですが、いかんせん難解な作品が多いのがネックで、挫折を誘発するのではという不安も少なくありません。

しかし作者の持つ知識と小説としての表現力が完ぺきに混じりあった「宇宙消失」は、SFに触れ始めたばかりのころでもその衝撃に身を預けることができるのではと思うので、こちらでおすすめさせていただきます。

ハードボイルドとミステリー要素がメインの本作ですが、それをかき乱す役割を任せられた量子論の存在が、他の小説にはない深みと広がりを物語に与えているのが特徴。

タイトルだけ見ると地球から宇宙に出ていくようなイメージを持たれるかもしれませんが、むしろ生活している圏内に宇宙を引きずり下ろすような感覚が近い小説といえそうです。

理屈をすべて理解しようと思えば大変な勉強が必要になる、というかそもそもしっかりと読み切ることが既に難関のひとつでもある小説ですが、ある程度はキャラクターの心情や考察を通して作中の問題がスマートに落とし込まれているので、読んでいくと何となくなら物語を感じていくことができるでしょう。

1回で理解する必要はないので、まずはグレッグ・イーガンらしいハードSFを楽しんで、少しずつその中身に入りこんでいくことがおすすめです。

ハードSFを読むことに抵抗がなくなると次に読む小説の選択の幅は一気に広がるので、ぜひ挑戦してみてほしいですね。

宇宙消失 (創元SF文庫)

宇宙消失 (創元SF文庫)

虎よ、虎よ!

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)

SFにゆるされる設定や展開をすべてパワーとスピードに置き換えたような疾走感が魅力の「虎よ、虎よ!」も、間違いなくおすすめしておきたい小説です。

日常ではないことを強調して証明するように、SFにはたびたび攻撃的な描写やバイオレンスな要素が盛り込まれるものですが、この作品ほどその衝動を克明に書けた小説はないのではないでしょうか。

しかし復讐劇というテーマと、ぴょんぴょんと目まぐるしく飛ぶように進行していく展開についていくのは大変で、人を選ぶ内容であることもたしかです。

勢いで読むことができるのですがきちんと理解することは難しく、私も何度か繰り返し読まなければなりませんでした。(初回は「なにこれ?」と感じましたね)

それでもSFとして振り切った展開、怒涛(?)のクライマックス、宇宙的な規模のスケールは、この小説だから成し得た結果だといえるでしょう。

物語のなかに散りばめられた点と点を線にできたとき、虎よ、虎よ!の本当の姿が見えてきます。

不意に面白いと思える瞬間がやってくるので、根気よく付き合ってみてほしい小説としてここで紹介しておきましょう。

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)

タイムマシン

タイムマシン (偕成社文庫 (3234))

幼少期に出会ってから、私の本棚からはいちどたりともこの本が欠けたことはありません。

SFの原点ともいえるH.G.ウェルズの「タイムマシン」を、すべての読書家におすすめできる本としてここに記載します。

未来に跳んだ男が見た世界を社会的に描き出す構図によって、「まったくあり得ない」とは言わせないリアルさを表現しているのが本作の特徴。

フィクションでありながら、いずれフィクションではなくなるのではないかという疑念を持たせるだけの深みが、ウェルズのタイムマシンにはあるのです。

ユートピアとディストピアを表裏一体に書くことが何を意味するのか、想像はできるが答えは出せないという絶妙なラインを示す作家は、もうそれほど多くないのではないでしょうか。

児童書籍としても採用されるくらい優しい内容である一方、どこか大人のこころにノスタルジーを引き起こすような切なさも感じられます

私は何度読んでもこの小説で書かれている「交流」にぐっと来てしまうのですが、みなさまはどうでしょうか。

複数の翻訳者による本が何冊も出ているので、それぞれを見比べてみるのもおすすめです。

タイムマシン (偕成社文庫 (3234))

タイムマシン (偕成社文庫 (3234))

Self-Reference ENGINE

Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)

個人的に今日本国内の作家のなかで圧倒的に面白いと感じるのが、「円城搭」先生です。

そのなかでも「Self-Reference ENGINE」は、SFとして、純文学として、そしてどのジャンルにも縛られない円城搭という存在の化身としておすすめできる作品となっています。

「どう面白いの?」「どんな展開を楽しめるの?」そんな言葉はすべて愚問となるでしょう。

もう何度も読んでいる本ですが、私はこの小説の内容を正しく説明・解説することができません。

ただ一言「面白い!」という、安直な感想を口にできるだけです。

何がどうなっているのか……もはやこの本の存在そのものがSFのように感じられるので、とにかく作中のひとつのお話に触れてみていただきたい。

読めばわかる、しかし読まなければ一生わからない、ある意味でそんな単純な本ではないかと思うのです。

Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)

Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

日本SFは「伊藤計劃」の登場によって、新しい可能性が示されたと感じられます。

特に「ハーモニー」はSFという長い歴史を持つジャンルのなかでも、まったく埋もれない不朽の名作小説になっていくのではないでしょうか。

この小説はあらゆる角度からの「不意打ち」によって形成されているため、言葉たちに背中を押されるようにしてどんどんその世界にのめりこんでいけます。

意識、存在、自由、個人、社会、あらゆる言葉を調和で包み込むような、優しいディストピア。

このハーモニーの世界に対して何を感じるのか、ぜひ読んでから考えてみてください。

残念ながら伊藤計劃は既に亡くなっておりますが、残された小説たちの存在は永劫に近い感覚で残されると思います。

哲学の世界を内包した「虐殺器官」、円城搭によって引き継がれた「屍者の帝国」、そして作品群「The Indifference Engine」は、今後も日本SFの代表的な存在になっていくでしょう。

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

SFを読むときのポイント

時代や自分の生活によって面白さが変わる?

SF小説においてその作品に共感できるかどうかという点は重要で、どれだけ面白い設定やストーリーが書かれていても、自分の肌に合わなければイマイチ楽しみ切ることができません。

しかしそんな特性を持つからこそあのときはハマれなかったSF小説が、後から突然面白く感じることも多いのです。

その時代の空気や自分の生活環境によっても感じ方は変わってくるので、長い時間のなかには何度でも読み返すチャンスが巡ってくるでしょう。

例えばロボット技術がさらに進化した未来に読むアイザック・アシモフは、過去に読んだものとまったく違った感想を得るかもしれません。

他にもSFらしい世界が現実になるにつれて、もしくは実現不可能なことがわかってくるにつれて、面白味が増してくる本がたくさんあります。

SF小説の種類は本当に豊富なので、ピンとこなかったら素直にその本を閉じて、今楽しめる別の本に移行するのもおすすめです。

作家にこだわる必要はなし

今回ご紹介したSF小説たちは、どれもそれなりに有名な作家が書いた定番作品ばかりとなっています。

これらの作家はたしかな安定感と今でも埋もれずに残れるだけの特別な魅力を持つ小説を書いていますが、意識して作家にこだわって読む本を制限する必要はないでしょう。

もちろん「この作家の感性が好き」「新しく翻訳されたら絶対に買う」といった気持ちは大切です。

しかしそれが結果的に「知らない作家の本は買わない」ということにつながってしまっては、もったいないことになるでしょう。

SFの強みはその独創性でありますが、作家の独創的な閃きは決して無尽蔵ではなく、ある程度はアイデアの発見に限界があります。

つまり他にはないSFのアイデアを読み続けるには、あらゆる作家の物語に触れていくことがおすすめされるのです。

SFの可能性は本当に底がないので、自分でその範囲を狭めることのないように、色々な作家に挑戦していきましょう。

まとめ

楽園の泉、一九八四年、ニューロマンサー、夏への扉、月は無慈悲な夜の女王、星を継ぐもの、タイタンの妖女、銀河ヒッチハイクガイド、世界の中心で愛を叫んだけもの。

SF小説のおすすめを挙げろと言われれば、もちろんまだまだ紹介していくことができます。

しかし結局は癖の強い小説ばかりなので、どれだけおすすめを並べても実際に読んでみなければその面白さを体感できないでしょう。

SFにつきまとう難しいというイメージは今、翻訳者たちの努力のおかげでどんどん解消されてきているため、この機に何か1冊を読み始めてみてください。

この記事を書いた人

syunkin999