万城目学のおすすめ小説10選!ユニークを超えるほどの面白さとは?

現代とファンタジーの融合を試みる小説はたくさんありますが、「万城目学」の作品はそのなかでもとびぬけてクオリティの高いものとなっています。

面白おかしい設定や構成はもはやユニークを超えて、新感覚の「小説らしい面白さ」を読者に伝えてくれるでしょう。

今回はそんな万城目学の小説から、おすすめ作品を10冊厳選してみたいと思います。

とにかく明るく楽しめる小説を探しているときには、万城目学というジャンルから気になる作品をチェックしてみましょう。

万城目学とはどんな小説家?

万城目学のおすすめ小説10選

「鴨川ホルモー」が第4回ボイルドエッグズ新人賞を受賞してデビューを飾った万城目学氏は、その後数々の名作と共に世間に認知されていきます。

主に関西地方を舞台とした小説が多く、京都、大阪、奈良を使った作品たちが代表作となるでしょう。

現実世界にファンタジックな要素を取り入れる作風が特徴で、まずそこだけの「世界の構成」で魅せるのが万城目学小説の面白さです。

あり得ないことなのに納得して読めるため、読書によって不思議な感覚を堪能することができます。

おふざけもコメディも抜群の切れ味を持つので、読んでいてとにかく楽しい作家だといえるでしょう。

「鹿男あをによし」「プリンセス・トヨトミ」「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」「とっぴんぱらりの風太郎」が直木賞候補となり、その他にも本屋大賞などにランクインしている実績があります。

映像化も多数実施されているので、今後の新作にも注目が欠かせないことは間違いありませんね。

万城目学のおすすめ小説10選

鴨川ホルモー

「鴨川ホルモー」こそが、万城目学の魅力であるワードセンスとテンポの良さ、そして清々しくて馬鹿馬鹿しい空気が存分に味わえる1番のおすすめ小説です。

謎のサークルに勧誘され、「オニ」を操る「ホルモー」という競技に参加することになる主人公が、京都という現実とファンタジーの狭間で青春を謳歌する物語。

そんな説明だけではわけがわからない小説ですが描写は非常にわかりやすく、読めばするりと万城目学の世界に入りこむことができます。

所々に顔を出す独特の表現や突飛な展開は、他にはない万城目学節として楽しむことができるでしょう。

しかしホルモーをはじめとしたファンタジー要素はあくまで仕掛けであり、実際にはそういった環境を理由に変化していく恋愛・青春模様が主題となっています。

ひたむきに、言うならば愚直に立ち回るキャラクターたちは、くすりと笑わせてくれるような現実的な明るさを提供してくれるでしょう。

万城目学という作家がどんな本を書くのかが一発でわかる作品となっているので、最初に読む本としておすすめできます。

鹿男あをによし

処女作の鴨川ホルモーをさらに読みやすく、そして王道路線を突き詰めた傑作が「鹿男あをによし」という小説です。

教師として奈良に赴任した主人公がいきなり鹿に話しかけられ、そこから神秘的で突拍子もない事態に巻き込まれていくというのが本作のあらすじ。

鹿に託された使命を達成するべく、翻弄されつつも奔走する主人公「おれ」の姿には、何かしら応援したくなるような気持ちを覚えるのではないでしょうか。

自分の顔が鹿になってしまったこと、そして儀式で使うとある「目」を取り戻さなければ日本が滅びるという事実、そんな2つの切迫感に挟まれたストーリーからは、古き良き物語の楽しさを見つけられます。

ユニークなだけでなく、歴史要素や奈良という土地ならではの魅力も見られるので、とにかく楽しく読み進められるでしょう。

そしてこの小説を引っ張っていくのが、主人公の学校の生徒であり、ヒロインでもある「堀田イト」です。

彼女と一緒に進行していく展開は笑いと温かさに溢れ、「鹿男あをによし」という小説を引き立ててくれます。

後半の疾走感と漫画のような白熱描写も彼女によって牽引されるものなので、とにかくその言動に注目となるでしょう。

万城目学作品はエンタメ小説に必要となるキャラクターの魅力が抜群となっているので、「鹿男あをによし」からその良さを体感してみるのもおすすめです。

プリンセス・トヨトミ

壮大なファンタジーでありながら、いわゆるイメージにおける「幻想」とは違った要素を取り扱った「プリンセス・トヨトミ」もおすすめの小説です。

緻密なプロットを感じさせる設定と展開は、終盤にかけてものすごい勢いをつけてストーリーを加速させていきます。

400年の歴史を持つ大阪の秘密、それが暴かれる事件を軸に広がりを見せる「あり得ない物語」には、万城目学だから書けたギリギリのリアル感が見られるでしょう。

「大阪が完全に停止する」という言葉が既にワクワクとさせてくれるので、きっと万城目学の書く大阪を楽しめると思います。

大阪に住むからこそ思う感覚や歴史認識も面白く、読んでいくとなぜこのような設定を持つ小説が書けたのかがわかるでしょう。

当然ここに書かれているのはフィクションなのですが、どこか信じてみたくなるような、もしかしたらと思えるような錯覚を感じられます。

それくらい雰囲気のある小説なので、大阪の別の顔を見るような気持ちで楽しんでみましょう。

かのこちゃんとマドレーヌ夫人

スラップスティックを思わせるドタバタ劇だけでなく、「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」のような柔らかい物語を書けるのも、万城目学の魅力として知られています。

人間の感覚をトレースしつつ、動物らしい愛らしさに満ちたキャラクターが多いこの作品からは、気持ちのいい感動を得ることができるでしょう。

外国の言葉を話すアカトラの猫「マドレーヌ夫人」と小学生の「かのこちゃん」、そして犬の「玄三郎」を中心に巻き起こるちょっと不思議なお話。

こっそりと進む秘密めいたストーリーはこそばゆく、懐かしい子供時代を思い起こさせてくれます。

ユニークであり、そして真剣である小説の空気が、これまでの万城目作品とは違った面白さを提供してくれるでしょう。

とにかくマドレーヌ夫人をはじめとした動物たちの個性が光るので、万城目学先生が書くキャラクター小説の真髄が見られます。

動物たちが考えていることは人間側が想像するしかありませんが、この小説には「こうだったらいいな」と思わせるような会話や思考が書かれているのが特徴。

動物好きな読者は特に、心を動かされるような小説になることでしょう。

偉大なる、しゅららぼん

万城目学先生らしい不思議な雰囲気とイメージのしやすさ、それが両輪としてがっしりハマっているのが「偉大なる、しゅららぼん」です。

「湖の民」が持つ不思議な力を扱うための修行をすることになった主人公「日出涼介」が、家の歴史や周囲の人々に振り回される超能力エンターテイメント小説というのが、本作の立ち位置となります。

個性的に過ぎるキャラクターが立ち回り、物語をひっかきまわしていく様子からは、とことんまで突き詰めた痛快さを感じられるでしょう。

勢い重視の展開にコメディチックな要素がふりまかれているので、とにかく笑いながら読めるのがポイント。

この発想力こそが万城目学先生の魅力であり、ユニークを超えるほどの面白さを味わうきっかけとなるでしょう。

少年漫画を彷彿とさせる青春小説として成立している本作は、特にキャラクター同士の関係性に楽しさを見出すことができます。

できるかぎり会話内容や交流の変化に注目して、物語の顛末を感じてみましょう。

滋賀の琵琶湖が舞台となっているので、お得意の地元描写を楽しめるのも「偉大なる、しゅららぼん」の魅力ですね。

バベル九朔

がっつりとしたファンタジーであり、なかなかに意味深な雰囲気と難解な描写が特徴の「バベル九朔」もおすすめしておきたい小説です。

これまでとは打って変わってどこか内向的な空気は好き嫌いを生みますが、それでも作者の持つエネルギーはしっかりとユニークな展開を形作っています。

作家を目指す雑居ビルの管理人という設定は、万城目学氏本人の経歴を思い起こさせるでしょう。

その雑居ビルからパラレルの雑居ビルへとつながり、いつもの雑居ビルはいつの間にか91階建てというあり得ないものに……。

そんな空想の雑居ビル「バベル九朔」で発生するさまざまな事件には突拍子もなく脈絡もない、とにかく自由な空気が特徴。

何が何やらと考えているうちに、どんどんその世界に飲み込まれていくでしょう。

限定的な空間で描かれる新しい万城目学ワールドもまた、今後の可能性につながるものであると私は思います。

京都や大阪といった広大なフィールドを利用してきた過去作とは違う作者の新たな試みを、ぜひチェックしておきましょう。

パーマネント神喜劇

万城目学先生らしい本を求めるのなら、神様のお仕事奮闘記といった感じの展開が笑いを誘う「パーマネント神喜劇」もおすすめ。

「神」「喜劇」というタイトルに偽りなく、本作では縁結びの神様を中心とした面白おかしいエピソードが主題となっています。

ビジネス感覚で人の願いを叶えるラフな神様、それを逆手に取った心震わせるストーリーが、素敵な読書体験をさせてくれるでしょう。

連作短編集の体をしているので、さらっと読みやすいのも魅力。

万城目学作品は総じて疲れたときに読むと少し元気が回復するような雰囲気がありますが、「パーマネント神喜劇」は特にそういった傾向がある小説でしょう。

本作には万城目作品に登場したいくつかの要素がちょっぴり顔を出しているので、「おっ!」と思えるような部分も見つけられますよ。

ホルモー六景

「鴨川ホルモー」のスピンオフ作品集である「ホルモー六景」は、万城目学作品をより深く知るのに必要な本となるでしょう。

本編に登場したキャラクターを使ったサイドストーリーは、それぞれが独立した面白さを持つ短編集となっています。

「鴨川ホルモー」のキャラクターを掘り下げると同時に、既にある世界を使って新しい風景を作る小説となっているので、読む順番が逆になっても大丈夫でしょう。

「ホルモー六景」を読んでから「鴨川ホルモー」を読むと、また違った感覚で内容を楽しめるかもしれません。

どちらかといえば恋愛要素が強調されているので、青春小説らしい甘さと苦さを求める人におすすめの1冊となります。

ホルモーではファンタジーバトルの面が強かった分、こちらで人間関係の面白さを補っているようなところがあるため、2冊合わせてチェックするといいでしょう。

とっぴんぱらりの風太郎

万城目学ワールドを戦国時代で表現した歴史小説「とっぴんぱらりの風太郎」も、おすすめしないわけにはいきません。

伊賀の国を首になった忍者「風太郎」が、ひょうたんに潜む謎の怪異に導かれて時代の変容に巻き込まれる展開は、良い万城目ファンタジーを体現しています。

色鮮やかなキャラクターとユーモアたっぷりの語り口も健在で、例え時代が変わっても変わらない万城目節がしっかりと書かれているのが特徴です。

時代小説に慣れていない人でも難しく考える必要はなく、むしろこのライトな歴史感をきっかけに本格的な歴史小説にチャレンジしてみるのもおすすめされます。

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いつもの作風が維持されている一方で、「とっぴんぱらりの風太郎」には戦国時代らしいシリアスで暗い雰囲気も漂っています。

それでいて最終的にたどり着くのは「感動」であり、作者の代表作である「あの名作」につながる様子はぐっとくることでしょう。

700ページを超える大作ですがスラスラと読めるはずなので、ぜひ気負わずにこの名作を手に取ってみてください。

ザ・万字固め

万城目学先生のユニークさは小説だけに留まらず、エッセイによっても表現されています。

例えば「ザ・万字固め」のような本であれば、より言葉を使った面白さを堪能することができるでしょう。

「いつもこんなことを考えているのか!」と感心してしまうような空想と発想力には、思わず吹き出してしまうかもしれません。

旅先の様子や海外での出版事情、戦国武将でサッカーチームを作る妄想、作家仲間の綿矢りさと森見登美彦との会話など興味深い内容が収録されていることから、3冊目のエッセイであるこちらが個人的にはおすすめ。

もちろんその他のエッセイ作「ザ・万歩計」「ザ・万遊記」も面白く読めるので、まとめてチェックしても楽しめるでしょう。

万城目学を読んだ人におすすめしたい作家!

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森見登美彦

万城目学先生の書くファンタジー小説に負けないほどのファンタジーを描くのが、「森見登美彦」先生です。

2人はそれぞれのエッセイに登場するなど、作家としての交流が見られるほどの仲良しでも有名ですね。

「腐れ大学生」という新ジャンルを開拓し、ハチャメチャな展開と独特の文体で縦横無尽に駆け回る小説は、まさに唯一無二。

ユニークさの裏に隠された切なさもまた魅力で、笑いながらもしんみりとできる小説を楽しめるでしょう。

「夜は短し歩けよ乙女」「四畳半神話大系」「太陽の塔」「ペンギン・ハイウェイ」「夜行」「恋文の技術」など、おすすめしたい作品は多数あります。

文章による面白さを追求し続ける森見登美彦氏の小説は、ぜひ読んでみてほしいですね。

東野圭吾

意外かもしれませんが、「東野圭吾」はコメディ作品を多数書いている小説家なのです。

万城目学とはまた少し違った角度ではありますが、思わず笑ってしまうような作品を読むことができるでしょう。

「黒笑小説」「毒笑小説」「疾風ロンド」「名探偵の掟」といった小説からは、東野圭吾だから書けるユーモアを楽しめます。

ミステリーが面白いのはもちろんですが、ユニークな小説も魅力的となっているので、あえて笑いを求める人にもおすすめしてみたいですね。

まとめ

万城目学先生の小説だから楽しめる、万城目学先生しか書けない、そんな小説がたくさんあります。

ひとつでも興味を持てたのなら、ぜひ色々な作品に手を伸ばしてみてください。

ユニークでユーモアたっぷりの文章は、癖になるような面白さを提供してくれるでしょう。

この記事を書いた人

syunkin999