2009年に始まった「余剰電力買取制度」。余剰電力の買取期間が10年に設定されたことで、2009年以前に太陽光発電を設置した世帯では、今年2019年に買取義務保証期間が満了を迎えます。
多くの世帯で売電による収入の獲得が難しくなることから、この問題は「2019年問題」と呼ばれ、2009年に太陽光発電を設置した世帯は今後どのような対策をとればよいのか、深く考えなければなりません。
ここでは、2019年問題の概要や余剰電力買取制度の目的、今後の対策などについて詳しくお話していきます。
太陽光発電における2019年問題について
2019年問題は、冒頭で軽く述べたように、2009年以前に太陽光発電を設置した世帯が2019年に余剰買取制度の期限が満了を迎え、売電が困難になる問題のことを指します。
2009年当時、再生可能なエネルギーを普及させるために、政府が太陽光発電を設置する世帯に対して、10年間高い価格で電気を買い取ることを保証した制度を設けました。これが「余剰電力買取制度」です。
余剰買取制度は2009年11月1日にスタートし、2012年7月1日まで実施されていました。その後は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)」に基づいて、再生可能エネルギーの「固定価格買取制度(FIT制度)」が実施される運びとなりました。
これら一連の制度で設けられた電気の買取期間が10年。電気の買取価格は設備の規模や年度などによって異なりますが、一般家庭(10kW以下)の場合、2009年当時では48円/kWhでした。
この買取価格は非常に高く、太陽光発電を設置した世帯の中には売電によって初期費用の回収後に大きな収入を得ることが出来ていたのです。
しかし、この非常に割高な買取価格の期間が10年に設定されているので、2009年に太陽光発電を設置した世帯は今年2019年に満期を迎えます。つまり売電によって安定した収入を得られなくなったわけです。
また、売電自体が難しくなるなど、今後どのようにすべきかを考える必要が出てきました。こうした問題から「2019年問題」と呼ばれるようになったのです。
2019年問題に直面する世帯
2019年問題に直面するのは、2009年以前に太陽光発電を設置した世帯です。そして最初の満了が2019年11月となり、順次満了していくことになります。
つまり、2009年以前に売電を開始した世帯は2019年11月、2010年5月に売電を開始した世帯は2020年4月、2011年8月に売電を開始した世帯は2011年7月に満了を迎えます。
2019年問題の具体的な問題点
固定価格買取制度の期間満了を迎えることで生じる問題点は、大きく分けて「電気の買取価格が安くなる」「売電先を探すのが難しくなる」の2つです。
電気の買取価格が安くなる
固定価格買取制度では、電気の買取価格が高く設定されています。これによって売電で収入を得ることができたわけですが、満期を迎えた後の買取価格は固定ではなく、決定権が電力会社に委ねられることから、遥かに安い価格設定になることが想定されます。
そもそも固定価格買取制度における買取価格は、2009年には一般世帯(10kW以下)で48円/kWhでしたが、2011年に42円/kWh、2013年に38円/kWh、そして2019年に24円と年々下がってきています。
年度 |
住宅用(10kW以下) |
事業用(10kW以上) |
2009年(平成21年) |
48円 |
系統電力と同程度(約24円) で電力会社が自主買取 |
2010年(平成22年) |
48円 |
|
2011年(平成23年) |
42円 |
|
2012年(平成24年) |
42円 |
40円+税 |
2013年(平成25年) |
38円 |
36円+税 |
2014年(平成26年) |
37円 |
32円+税 |
2015年(平成27年) |
33円(出力抑制なし) 35円(出力抑制あり) |
29円+税 |
2016年(平成28年) |
31円(出力抑制なし) 33円(出力抑制あり) |
24円+税 |
2017年(平成29年) |
28円(出力抑制なし) 30円(出力抑制あり) |
21円+税 |
2018年(平成30年) |
26円(出力抑制なし) 28円(出力抑制あり) |
18円+税 |
2019年(平成31年) |
24円(出力抑制なし) 26円(出力抑制あり) |
14円+税 |
固定価格買取制度における買取価格の下落は、一般的な売電の上限額を意味すると言っても過言ではありません。
満了後の世帯に対する買取価格は各電力会社が独自に決めるので、2019年の固定価格買取制度における買取価格が24円/kWh(または26円/kWh)でも、満了後の世帯に対する買取価格は当然それ以下になります。
2019年4~6月に大手電力会社から買取価格や手続きなどについての発表が行われる予定ですが、10円/kWh以下になると予測されています。
10円/kWhと仮定した場合、2009年当時の48円/kWhの約1/5になってしまい、こうなると電気力発電で収益化を図るのが難しくなるのは明白です。
なお、大手電力各社からの発表は以下のスケジュールで行われる予定です。気になる方はチェックしておきましょう。
2019年4月 |
関西電力、北陸電力、四国電力、中国電力 |
2019年5~6月 |
九州電力 |
2019年6月 |
東京電力、東北電力、北海道電力、沖縄電力 |
売電先を探すのが難しくなる
4~6月に大手電力各社から電気の買取に関する発表が行われますが、その内容には「買取の可否」も含まれています。
つまり、電力会社の中には買取不可とするところも出てくる可能性があるのです。契約会社が買取不可になった場合、一般送配電事業者が無償で引き受ける形になる模様。
また、買取可としても買取価格が極端に安い場合もありえます。高く売りたい場合には大手電力会社ではなく、小売電気事業者などと個別に契約することになりますが、まだまだ売電できる事業者が少ないので、売電先を探すのはかなり難しくなるでしょう。
2019年に満期を迎える世帯の今後の対策
このように、2019年に満期を迎える世帯には様々な問題が発生し、今後どのようにすれば良いのかについて考える必要が出てきました。
今後の対策として考えられるものとしては、「自家消費」で余剰の電気を使い切るということ、買取価格は安くても「売電を継続」すること、この2つが挙げられます。
自家消費
世帯によって大きく異なりますが、太陽光発電で生み出した電気の30%を自宅で消費し、余った70%程度の電気を買取してもらう世帯が多いとされています。
今後は基本的に電気の購入価格よりも売却価格が安くなってしまい、売るメリットが小さく買うデメリットが大きくなってしまうので、余剰の70%を自宅で消費することができれば今後困ることはありません。
では、どのようにして電気を多く使えばよいのでしょうか。これには「オール電化」が有効となります。オール電化とは、自宅の全ての熱源を電気で賄うことです。
調理設備にガスコンロ、給湯設備にガス給湯器などを使用している世帯は、調理器具をIHクッキングヒーターにしたり給湯設備を電気給湯器に変えることで、ガスの消費をなくし、自宅で電気を多く消費させることができます。
また、太陽光発電によって昼間に生み出した電気を夜間に使えるようにするために蓄電池を設置したり、電気自動車で自家消費するという対策もあります。
IHクッキングヒーター・電気給湯器/エコキュート
IHクッキングヒーターとは電磁線を使用した調理設備で、ガスではなく電気を使用し電磁波を振動させることで加熱するものです。
電気給湯器は電気を使用してお湯を沸かす給湯システムが採用され、これにヒートポンプという空気の熱を利用してお湯を沸かす技術を取り入れたものがエコキュートです。
このような電気を消費する設備を導入することで、太陽光発電によって生み出した電気を効率よく使うことができるようになります。ガスを使用しないのでガス料金はかかりませんし、電気を購入するよりも経済的です。
電気設備の導入には費用がかかりますが、一部の自治体では電気設備の導入費用を多少負担してくれるので、お住まいの自治体で補助制度を実施しているかを確認しておきましょう。(検索はこちら)
蓄電池
蓄電池とは電気を蓄えておく設備のことです。太陽光発電で生み出した電気は昼間しか使えませんが、蓄電池を導入すれば夜間にも使うことができるようになります。
また、蓄えた電気をいつでも使えるので、災害などによる停電対策にも力を発揮します。電気の復旧は一般的にガスよりも早く、大体1~2日で復旧しますが、1~2日でも夜間に電気が使えなくなるのは非常に困るものです。
日本は災害の多い国で、大きな災害が度々起こっているので、災害対策として導入を検討してみるのもよいでしょう。
蓄電池も導入費用がかかりますが、一部の自治体で補助制度を設けています。補助制度を設けていても自治体によって要件は異なるので、事前に確認しておくようにしましょう。(検索はこちら)
電気自動車
電気自動車を使用するというのも一つの手です。充電設備が必要になりますが、一度導入してしまえば太陽光発電の電気を充電に使うことができます。
環境保全における対策から、国を挙げて電気自動車を推進しているので、今後はますます利用者が増えることが予想されますし、大手自動車メーカーも次々に新たな電気自動車の開発に取り組んでいます。野外での充電スタンド数も増えていくことでしょう。
電気自動車の購入・充電設備の導入に対しても補助制度があります。事前に確認しておくことをおすすめします。(国の補助制度はこちら)
売電の継続(相対・自由契約)
10年間の期間が満了しても電気を売ることは可能です。大手電力各社が電気の買取に関する発表を出すのは4~6月なので、まずは発表を待ちましょう。
大手電力会社へ継続して売電するほか、小売電気事業者などと個別契約して売電するのも一つの手です。おそらく大手電力会社よりも小売電気事業者が高く売れるはずです。
そうはいっても、これまでのように満足のいく価格にはならないでしょう。しかし、余った電気を捨ててしまうのはもったいないですし、少しでもお金に換えられるならそうした方が良いのは明白です。
現在契約している電力会社が買取を継続する場合、小売電気事業者などへの個別契約が可能な場合には、これまで通り売電するのもよいでしょう。
なお、経済産業省の資源エネルギー庁が売電可能な小売電気事業者をホームページに掲載しています(掲載ページはこちら)。随時更新していくようなので、こまめに確認しておきましょう。
まとめ
2009年以前に太陽光発電による売電を開始した世帯は、2019年11月に固定価格買取制度の満期を迎えます。電気を高く売ることができなくなるほか、売ること自体難しくなってしまうので、多くの世帯が今後どうすればよいのか選択を迫られます。
今後の対策としては、自家消費と売電の継続が挙げられ、いずれもメリット・デメリットがありますが、先々のことを考えれば自家消費の方が良いでしょう。
ガス設備を電気設備に変更すれば電気の消費量を増すことができ、電気を無駄なく使えるほか、光熱費の節約にも繋がります。
もちろん売電を継続するのも良い選択です。どちらを選択するかについてしっかりと考え、早めに決断を下すようにしましょう。