イーサリアムがPoSへの移行を予定!これによって何が変わるのか

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ビットコイン(Bitcoin)に次いで、時価総額ランキング2位に位置する「イーサリアム(Ethereum)」。これまでに様々なアップデートが行われてきましたが、今後も大型アップデートが控えています。

その中でも大きな注目を集めているのが、「ProgPoW」の実装と「PoS」への移行です。これらのアップデートが実施されれば、マイニングがしやすくなるほか、51%攻撃を対策できるなど様々なメリットが生まれます。

当ページでは、イーサリアムのこれまでのアップデートを踏まえながら、ProgPoWやPoSとはどういうものなのかを詳しくご説明いたします。

イーサリアムの歴史とロードマップ

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イーサリアムは、2013年に当時19歳だったヴィタリック・ブテリン氏によって作られた仮想通貨です。この時すでにビットコインが存在していましたが、イーサリアムは決済用の通貨であるビットコインとは目的が違い、分散型アプリケーション(DApps)開発のプラットフォームとして誕生しました。

そして2014年7月にICOが実施され、25,000BTC以上の資金調達に成功。1年後の2015年7月に初めてのアップデートとなる「Frontier」、2016年2月に2回目の「Homestead」、2017年にも「Metropolis」のうちの一つである「Byzantium」が実施され、順調な改良を経て現在に至ります。また、今後も様々な大型アップデートが控えています。

①Frontier(フロンティア)

Frontierは、イーサリアムの1回目となるアップデートで、2015年7月に行なわれました。その目的は、イーサリアムを開発者向けに開放することでした。同年の5月にテスト環境でリリースされ、Frontierで初めて一般のインターネットに公開されたのです。

実際にコードを書いて動かすことが可能になったものの、まだまだ実験段階で、バグの発生を想定した環境化で運用されました。

②Homestead(ホームステッド)

2016年2月に実施された2回目のアップデートとなるHomesteadの大きな目的は、先のFrontierで発生したバグの改善です。

実験段階であったFrontierではバグの発生を想定して、情報をブロックチェーンに記録しないようにしていましたが、Homesteadではブロックチェーンへの記録が開始され、イーサリアムが本格的に始動する運びとなりました。

また、フォーク(ブロックチェーンの分岐)を防止する技術、さらにはディフィカルティ(マイニング難易度)の自動調節プログラムが追加されるなど、様々な面で改良が加えられました。

③Metropolis(メトロポリス)

Metropolis(メトロポリス)は、「Byzantium(ビザンチウム)」と「Constantinople(コンスタンティノープル)」の2つから成り立ちます。

Byzantiumは2017年10月に実施され、zk-SNARKsという匿名性を高める技術と、マスキングというセキュリティを向上させる技術も導入されました。また、イーサリアムの大きな特徴であるスマートコントラクト機能が一般の人でも使えるようになりました。

一方のConstantinopleは、もともと2018年11月に実施される予定でしたが、バグが見つかったことで2019年1月にリスケジュールされ、さらに延期となって現在の予定は2019年2月となっています。

Constantinopleでは、ブロックのハッシュ方法の再編成、仮想マシン(EVM)の計算速度の向上、ブロックチェーン状態チャンネルの追加など、開発者がより開発しやすくなるような改善が実施される予定です。

また、PoWからPoSへの移行にあたって、前段階として「ProgPoW」が実装される運びになっています。(※ProgPoWはConstantinopleの内容ではない)

④Serenity(セレニティ)

Serenity(セレニティ)は、イーサリアムの最終アップデートで時期は未定ですが、このアップデートでPoWからPoSへの完全移行が行われる予定となっています。

仮想通貨のアルゴリズムの種類

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これまでに様々なアップデートが行われ、今後の重要なアップデートとして「ProgPoW」の実装、そしてPoWから「PoS」への移行が控えています。

この2つはイーサリアムの動向の中で最重要となる事項ですが、そもそもProgPowとはどういったものなのでしょうか。また、PoSとは何か、PoWとの違いは何なのでしょうか。

当項ではまずPoWやPoSなどのコンセンサスアルゴリズムの種類と、それぞれの特徴についてご説明します。

PoW(Proof of Works)

PoWは「仕事量による証明」を意味し、最も早く取引承認作業を行った人に報酬として通貨が支払われる仕組みで、採用している主な通貨にはビットコインやイーサリアム、モネロ(Monero)、ジーキャッシュ(Zcash)などがあります。

ブロックチェーンの暗号を解くために膨大な計算(電力)が必要で、ASICなどの高性能なマイニングマシンの独壇場になっているので、一般人はPoWの通貨を容易にマイニングすることができません。

また、一回のマイニングで10分ほどかかったり、51%攻撃の懸念があるなど、実用面においてもやや不安が残るアルゴリズムとなっています。

PoS(Proof of Stake)

PoSはPoWの欠点を補うよう作られたアルゴリズムです。PoWでは計算量に応じて報酬がもらえる仕組みでしたが、これでは膨大な電力がかかってしまうほか、高性能なマシンを使用している一部の人に報酬が偏ってしまうという欠点がありました。

そこでPoWでは計算量ではなく、通貨の保有量や保有期間に応じて報酬が支払われる形がとられ、電力を抑えつつ、多くの人にまんべんなく報酬が行き渡るよう設計されました。また、51%攻撃リスクも解消しています。

しかし、通貨を保有し続けることで流動性がなくなってしまうという欠点もあります。その欠点を補うために生まれたのが次のPoIとなります。

PoI(Proof of Importance)

PoIでは残高や取引回数、取引量などをもとにスコアリング化され、通貨を多く利用している人が恩恵を受けられる仕組みになっています。

多く利用するほど報酬が増えるので、PoSのように流動性の低下が起こる心配はありません。有名な通貨ではネム(NEM)がPoIを採用しています。

PoC(Proof of Consensus)

PoCはリップル(Ripple)が採用しているアルゴリズムです。PoWやPoSでは誰でも承認作業を行うことができますが、PoCでは発行主体が認めた機関のみ承認作業が行える仕組みになっています。要は非中央集権的なPoWやPoSに対して、PoCは中央集権的なアルゴリズムなのです。

特定の機関のみ承認作業が行われるというのは、信頼性に欠けるとして非難されることもありますが、認められている機関や企業はいずれも信用のあるところなので、不正が行われることはほとんどないと言っても差し支えありません。

イーサリアムがPoSへの移行の前段階に行う予定の「ProgPoW」

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このように、様々なコンセンサスアルゴリズムがあるわけですが、イーサリアムは現在のPoWからPoSに移行しようとしています。そして、その前段階として「ProgPoW」を実装することが仮決定されています。

ProgPoW(Programmable Proof of Work)はASIC耐性を高めるためのもので、現在採用しているPoWアルゴリズムのEthashではマイニングのために膨大な計算が必要になります。そのためASICなどの極めて高性能なマイニングマシンの独壇場になっているのです。

ASICは主に本格的なマイニング企業が使用しているもので、現状では私たち一般人がパソコンのCPUやGPUを使用してマイニングしても、ASICには全く太刀打ちできずフェアじゃありません。

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この問題を解決する目的としてProgPoWが実装されるのです。ハッシュ関数の変更、Mix Stateの増加、メインループへの数学的ランダムシーケンスの追加、DRAM読み込みの増大などによってGPU性能に最適化し、現状のASICのマイニング効率200%に対して、ProgPoWでは120%程度にまで抑えることができるとしています。

PoSに移行する大きな目的もASIC耐性の向上ですが、PoWからPoSへの移行期間に非中央集権的なネットワークが崩れてしまう可能があるので、スムーズにPoS移行するためにProgPoWを挟む形をとっているのです。

PoSへの移行によって起こるイーサリアムの将来

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PoSに移行することで、PoWでの欠点であった膨大な電力の消費、ASICによるマイニングの一極集中、51%攻撃などの様々な問題を解決することができます。

では私たちにとってどのような恩恵があるのでしょうか。この最も大きなものが、誰でもマイニングできるということです。

現状のPoWでは、ASICといった優れた演算能力を持つマシンでないと、実質的にはマイニングできません。しかしPoSでは保有量や保有期間に応じて報酬が支払われる仕組みになっているので、必要量を保有してさえいれば誰でも報酬を得るチャンスが与えられるわけです。

イーサリアムの現在の時価総額ランキングは、ビットコインに次ぐ2位に位置していますが、今後はビットコインを凌ぐとの声も多く挙がり、非常に期待されている通貨なので、容易にマイニングができるというのは私たちにとって大きなメリットとなります。

また、アップデート時には価格が高騰することが多く、イーサリアムのPoSへの移行には大きな注目が集まっているので、高騰した場合にはその度合いが激しくなる可能性もあります。

イーサリアムのPoS移行に関するまとめ

PoSへの完全移行の前段階として実装されるProgPoW。その時期は未定ですが、2019年2月末頃に予定されるConstantinopleの後に採用される見込みです。Constantinopleはすでに2回延期されているので、再延期の可能性もあります。そうなるとProgPoWの実装も遅れることになるでしょう。

PoSへの移行は、ProgPoWよりも後になります。こちらも未定となっていますが、イーサリアム開発者の間では2020年以降になると推察しているようです。

ProgPoWの実装、PoSへの完全移行が行われると、イーサリアムがさらに実用的になるほか、価格の高騰も予想されるので、最新のニュースを注意深くチェックしておきましょう。

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