ミステリー小説はこれまでの歴史のなかでさまざまなスタイルへと枝分かれし、それぞれの魅力を形作って現代に続いています。
そんな形の1つとして今国内に浸透しつつある作家が、「米澤穂信」です。
米澤穂信の書くミステリー小説は、これからも日常に対する高い親和性を持って私たちを楽しませてくれるでしょう。
こちらではそんな米澤穂信のおすすめ小説を10選チェックし、ご紹介してみたいと思います。
連続的に続いていくその面白さを、ぜひ体験してみてください。
米澤穂信のおすすめ小説10選!
折れた竜骨
舞台は12世紀末、魔法あり、剣もあり、そんな特殊な設定が縦横無尽に読者を翻弄するミステリー「折れた竜骨」は、米澤穂信のなかでも特におすすめできる小説です。
現代ではありえない設定を前提とした謎解きではありますが、決して理不尽な展開を押し付けることはなく、どこまでもフェアなミステリーとなっています。
世界観に納得した上で内容を楽しめるようになっているので、ファンタジーであることに戸惑うのはおそらく最初だけでしょう。
読んでいくと作者の絶妙なバランス感覚が現実性と非現実性を不自然なく融合させていることがわかり、物語の調和が面白いように手に取れます。
ファンタジー要素が強いからこそ許される展開を、ぜひ折れた竜骨から体感してみましょう。
西澤保彦などが長く歩み続けたファンタジーミステリーといえるようなジャンルには、近年でも乙一や西尾維新、そして米澤穂信などの作家が新たな作品を生みだしています。
この機に普通ではないミステリーが持つ精度を体感し、読書ジャンルを開拓してみてはいかがでしょうか。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2013/07/12
- メディア: 文庫
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古典部シリーズ
米澤穂信といえば魅力的なキャラクターを中心としたシリーズものですが、なかでも有名&安定して面白いのが「古典部シリーズ」でしょう。
「氷菓」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」「遠回りする雛」「ふたりの距離の概算」そして「いまさら翼といわれても」へと続く長期シリーズで、古典部のメンバーを中心に日常の謎を紐解いていくライトミステリーです。
事件性のある謎ではなく、ちょっとしたズレや不可思議さを対象に本気で考えるという展開が特徴で、私たちの生きる毎日がいかに謎によって囲まれているのかを再確認させてくれます。
登場人物たちの思考や、含みのある全体の空気感が面白く読めるため、トリックや犯人を追いかけるような物語だけがミステリーではないことを感じさせてくれるでしょう。
基本的にはシリーズ1作目である「氷菓」からの読書をおすすめしますが、キャラクターを理解できている場合はどこから読んでもOKです。
アニメ、マンガ、実写映画と幅広くメディア展開しているので、それらを先にチェックしてから原作小説を手にするのもいいでしょう。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2001
- メディア: 文庫
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小市民シリーズ
「小市民シリーズ」もまた、米澤穂信が書き続ける長編シリーズの1つです。
謎から離れられない2人の主人公を軸にしたミステリーで、古典部シリーズと同じく何でもないような日常のとっかかりに手を出していく形式となっています。
気軽にさらっと読める物語が魅力となっていて、米澤穂信が描く日常の不思議さを存分に堪能できるでしょう。
小市民らしく生きることを目指すというキャラクターの考え方を、どのように捉えるかが読む際のポイントになるかと思います。
キャラクター性の高い小説なので好き嫌いが出るかもしれませんが、青春に懊悩しながらも楽しんでいるその様子には自然と心が引かれてしまうでしょう。
本作は季節ごとに進んでいくシリーズであり、2018年では「春期限定いちごタルト事件」「夏期限定トロピカルパフェ事件」「秋期限定栗きんとん事件」の3作が刊行されています。
おそらく次回の「冬季」が最後になるかと思いますので、今のうちに既刊本をチェックしておくといいでしょう。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2013/10/18
- メディア: Kindle版
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ベルーフシリーズ
大刀洗万智を主人公とした「ベルーフシリーズ」が描く不可思議な謎の連続は、米澤穂信作品のなかでも特に光って見えます。
私たちの生活が当たり前ではないこと、物事には何かしらの意味や理由があること、そして世界は自分たちの日常を中心に回っているのではないことを実感させてくれるのではないでしょうか。
海外の文化や考え方を1つのキーポイントとして描いていく謎は、普段何気なく見ている多くのことを捉え直すきっかけになります。
変化していくキャラクターたちの心理と合わせて、その広がっていく世界の大きさを体験してみることがおすすめです。
ベルーフシリーズは2018年現在、「さよなら妖精」「王とサーカス」「真実の10メートル手前」と展開を続けています。
どれも重さを持ったミステリーとなっているので、まずは第1作目の「さよなら妖精」からチェックしてみてください。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/06/10
- メディア: 文庫
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インシテミル
いわゆるクローズドサークルミステリーを新感覚に書き起こした「インシテミル」も、米澤穂信のおすすめ小説として紹介したいですね。
高い報酬につられた人々を殺人ゲームに強制参加させるという導入には「大丈夫かな?」と感じましたが、わかりやすくミステリーの謎を作る舞台としては正解だったのでしょう。
リアルさや犯人の動機とかはとりあえずわきに置いて、ただ純粋にトリックの組み立て方やロジックに集中することができれば、かなり面白く読むことが可能です。
限定された空間だからこそ起こる事件と人間の心の動きには、ワクワクしながら没頭することができるでしょう。
ミステリーの知識に精通しているかどうかで楽しみ方が変わってくる可能性があるので、これまでにたくさんの謎解き作品を読んできた人にもおすすめです。
通信機器を当たり前のように個人が所有している現代で、クローズドサークルを無理矢理作成したらどうなるのか、インシテミルはそんな問いに答える小説でもあるのでしょう。
ミステリー小説がまだまだ広がりを持ったジャンルであることを、米澤穂信は示してくれているのかもしれませんね。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/06/10
- メディア: 文庫
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ボトルネック
米澤穂信が描くブラックファンタジーにどれくらいの切れ味があるのか、「ボトルネック」を読めばその鋭い切っ先にドキッとさせられるでしょう。
自分の存在しない世界が問題なく進行している苦しさ、それでいてそこにしか成立していない「生」がある愛しさ、そんなあらゆる感情が次々に湧き出てくるおかげで、ページをめくる手を止めるのが大変です。
ミステリー小説として進みながら、自分の存在意義を問う哲学的なものも感じさせてくれるので、1冊で複数の味を楽しめるでしょう。
個人的な感想を述べるとボトルネックはなかなか怖さもある小説であり、世界から追い立てられているような恐怖が感じられます。
その恐怖が肥大していくと世界はどうなるのか……、ぜひ最後の瞬間まで読み進めてみてください。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/09/29
- メディア: 文庫
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儚い羊たちの祝宴
なかなかのブラック具合を発揮している「儚い羊たちの祝宴」は、米澤穂信という作家の深さを知るにはうってつけの小説です。
流れるように読めるおかげで気づいたら結末が近づき、ラストの衝撃にあっという間に飲み込まれてしまうでしょう。
そんな短編が5作品もあるのだから、いい感じに小説としての深い味わいを楽しめることは請け合いです。
一文が持つ破壊力というか、この文章のために物語があったのではと思わせるほど強力な言葉が魅力。
米澤穂信の文章力が体感できるので、その構築された物語に浸ってみることをおすすめします。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/06/26
- メディア: 文庫
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追想五断章
「追想五断章」のような本を書けるからこそ、米澤穂信は今後も安定した本を執筆してくれる作家になるだろうと想像することができます。
物語の結末が曖昧な状態で提示される小説をリドルストーリーと呼びますが、「追想五断章」はその曖昧で不透明な結末を持った本を探し、そしてつなぎ合わせていくことが目的の物語です。
徐々に謎が浮かび上がってくる様子と、その表面を捉えたときのゾクッとした感覚はさすがで、リドルストーリーというスタイルを完ぺきに活かした内容になっています。
こわごわとした手触りが最後まで読者を離さず、ひんやりとした読後まで読者をつれていってくれるでしょう。
小説の結末が持つ曖昧さが新しい結末を作る展開に、作者の腕を感じますね。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/04/20
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 8回
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リカーシブル
青春を生きる10代のキャラクターを書くことに定評のある米澤穂信に興味があるのなら、「リカーシブル」の読書もおすすめです。
子供時代に感じられた閉塞感や不安感を書いているような、そんな薄暗さが小説の魅力として機能しています。
この街をおかしいと感じながら、その歪な狂気がゆっくりと忍び寄ってくることから逃れられない。
不気味な空気が徐々に満ちていく雰囲気は、米澤穂信が書くミステリーらしいといえるでしょう。
そしてやってくる結末……、思わぬところから石を投げられたかのような衝撃が、読後の満足感を高めてくれるはずですよ。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/06/26
- メディア: 文庫
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満願
単純に純粋に読み応えがある小説として、米澤穂信の「満願」は間違いなくおすすめの作品です。
6編のミステリーがそれぞれ個別に完成していることはもちろん、すべてを読み終わった後の言いようのない不安が、小説を読む面白さを改めて伝えてくれるでしょう。
満願はスカッとした物語や救いのある内容ではなく、悲しみや恐怖がどんと目の前に据えられている本です。
そういった普段は目をそむけたくなるものと正面から向き合っていくような感覚が続いていくからこそ、読後は不思議なほど放心させられてしまうのではないでしょうか。
満願というタイトルについて深く考えてみると、より物語のかたちが明瞭になると思われます。
「米澤穂信って面白いの?」という疑問がある人にこそ、とりあえず満願を読んでその実力を知ってもらいたいですね。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2017/07/28
- メディア: 文庫
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米澤穂信の魅力とは?
シリーズものの強さ
米澤穂信は同一のキャラクターや同じ世界を用いて、シリーズを作ることに長けた作家です。
そのため1度その中身にハマることができれば、その続きもまた楽しむことができるでしょう。
キャラクターの成長や変化、その他新しい出来事によるアプローチが、読者のこころを飽きさせずに捉えてくれます。
シリーズだから安心して読めるというメリットもあるので、米澤穂信をチェックするなら1つはシリーズものに挑戦してみることがおすすめです。
また米澤穂信の書く短編集も、シリーズものと似た連続感があります。
直接的なつながりはないかもしれないけど、どこか共通の意識を感じさせる構成が、ファンを増やす理由なのではないでしょうか。
いずれにせよ米澤穂信を読むときは、その連続性に焦点を当てて読んでみるのも面白いですよ。
作者のバランス感覚が魅力
米澤穂信が持つ物語のバランス感覚は、作品の完成度に大きく影響していると思われます。
「やりすぎない」段階で上手くストップをかけることができる技術が、読んでいてハラハラとさせるミステリーを形作っているのでしょう。
小説という形式はかなりの自由度を持っていますが、あれもこれもと継ぎ足していくと、何が何なのかわからない迷作が生まれることもしばしばあります。
しかし米澤穂信に関してはそういった心配がいらないので、安心して小説の展開に没頭することができるのです。
「折れた竜骨」や「リカーシブル」などはそういったバランス感覚のたまものであるため、ぜひ読み進めてみましょう。
不安や不快感に関するバランス感覚もさすがで、「これ以上いくと嫌な気持ちが強くなるな」といった少し手前で抑えられているように感じます。
そのおかげで程よい嫌味を楽しみながら、その世界に浸っていられるのです。
エンタメとして最高のバランスが実現されているので、米澤穂信の小説は今後もチェックしていくことをおすすめします。
米澤穂信といっしょに読みたい小説家
北村薫
米澤穂信が影響を受けた作家としても知られる「北村薫」は、合わせて読むのにもうってつけの存在です。
日常的な謎を取り扱うプロフェッショナルである北村薫の小説は、独特の切り口から開かれる不思議な感覚が特徴となっています。
ミステリーとしてはもちろん、その不思議な要素を体感するための舞台としての完成度が、小説を読むという行為を面白くしてくれるでしょう。
まずはとにかく「スキップ」「リセット」といった名作から、北村薫の真骨頂を味わってみてください。
森博嗣
科学や工学を利用した新感覚ミステリーを武器とする「森博嗣」も、米澤穂信を楽しんだ人におすすめしたい作家です。
キャラクターの魅力を引き出しながら進行していく物語は、常に読者の心理を刺激しつつ結末まで導いてくれます。
「そんな展開が可能なのか!?」と驚かされることも多いので、ミステリーの醍醐味である予測不可能な衝撃を楽しめるでしょう。
また森博嗣といえば「S&Mシリーズ」や「スカイ・クロラシリーズ」を筆頭に、さまざまなシリーズものを刊行していることでも有名です。
シリーズを通してキャラクターやストーリーの新たな展開を追っていけば、個々の小説がさらに面白く感じられるでしょう。
まとめ
米澤穂信の小説はミステリーファンから普段本を読まない人にまで、平等に面白さを伝えてくれる作品となっています。
長く読み続けられるものが多いため、とりあえず1冊を読書のお供として手に取ってみてはいかがでしょうか。
日常に潜む不思議を掘り返していくような内容は、リアルな生活にまで影響を与えるかもしれません。
米澤穂信作品をきっかけに、毎日の何気ないことを深く考えて楽しんでみるのもおすすめです。